投稿日:2012年05月26日 (土) 21時25分
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コンポージアム2012「細川俊夫の音楽」〜笙のソロ2曲と、オーケストラのための曲、そしてソプラノ、メゾソプラノ、二人の語り手、混声合唱とオーケストラのための を東京オペラシティ コンサートホール・タケミツメモリアルで、聴いてきました。 まずパイプオルガンの前に宮田まゆみさんが歩み出て、「光に満ちた息のように」が演奏されました。笙は息を吹き込んだり吸ったりして演奏するため、連続した音が得られますが、この曲はなだらかに音が繋がった静かな静かな曲でした。 次に、準・メルクルさんの指揮でN響が「夢を織る―オーケストラのための」を演奏しました。コンサートマスターは、堀正文さん。風が通り抜け、どこからともなく雅楽が聞こえるような静かな曲でした。 後半は、また笙のソロの「さくら―オットー・トーメック博士の80歳の誕生日に―」から始まりました。これはお誕生日のお祝いという性格からか、明るく勢いのあるもののように感じました。私の席はちょうど笙を演奏している向かい側である2階バルコニー席正面でしたが、1階で聴いておられた方によりますと、天空から笙の音が降り注いて来るような感じがしたとのことでした。 最後この日のメインプログラムというべき星のない夜―四季へのレクイエム―ソプラノ、メゾソプラノ、二人の語り手、混声合唱とオーケストラのため(2010)は、細川俊夫さん独特の音のうつろいというようなものが印象的でした。左右の3階バルコニーでのトロンボーンとトランペットと本オーケストラとの呼応、また様々なパーカッションが走り抜ける感じや、フルートへ息を吹き込むだけの音、あるいはまるで笙のように吹いたり吸ったりする奏法、合唱の声を出さない長い囁きのようなものなど、タケミツメモリアルの空気全体が音を振動させ、聴く者の心をとらえていくように感じました。ドレスデン空襲の目撃者による証言を、合唱団の中の男性と女性一人ずつが日本語でスピーカーを通して語りますが、これにおいかぶさるように次第に激しいオーケストラ、合唱が重なっていきます。語りの内容と音楽によって胸が締め付けられるようでした。その後、トラーケルの詩などをソプラノ半田美和子さんとメゾソプラノ藤村実穂子さんが歌います。最後はまた合唱が息をはいたり吸ったりするだけの言葉にならない歌で、能の「隅田川」で聴く鈴(りん)の音とともに静寂のうちに終わりました。神田さんのフルート、ステージ上の菊本さんと3階バルコニーの井川さんのトランペットの呼応などや、竹島さんがたの様々なパーカッション、またN響ならではの美しい弦が、第二次世界大戦と今回の震災による犠牲者へのより深いレクイエムとなっているような気がしました。 ************************************************************ 指揮:準・メルクル[2,4] 笙:宮田まゆみ[1,3] ソプラノ:半田美和子[4] メゾソプラノ:藤村実穂子[4] 東京音楽大学合唱団[4] NHK交響楽団[2,4] 細川俊夫:[1]光に満ちた息のように―笙のための(2002) [2]夢を織る―オーケストラのための(2010)[日本初演] [3]さくら―オットー・トーメック博士の80歳の誕生日に―笙のための(2008) [4]星のない夜―四季へのレクイエム―ソプラノ、メゾソプラノ、2人の語り手、混声合唱とオーケストラのための(2010)[日本初演] |
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