投稿日:2018年11月03日 (土) 08時12分
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12年ぶりに来日したというベルリンRIAS室内合唱団の演奏会に行ってまいりました。
ベルリンRIAS室内合唱団 11/2(金) 19:00開演 会場:東京オペラシティ コンサートホール 出演:ジャスティン・ドイル(指揮) ベルリンRIAS室内合唱団 [曲目] J.S.バッハ:モテット《主に向かって新しき歌をうたえ》BWV225 メンデルスゾーン:3つの詩編 op.78 J.S.バッハ:モテット《来たれ、イエスよ、来たれ》BWV229 ブルックナー:モテット集 ロクス・イステ(この場所は神が作り給う)WAB23 アヴェ・マリアWAB6 キリストはおのれを低くしてWAB11 パンジェ・リングァ(舌もて語らしめよ)WAB31&WAB33 エッサイの株からひとつの芽が萌えいで WAB52 J.S.バッハ:モテット《イエス、わが喜び》BWV227
というプログラム。 バッハ、メンデルスゾーン、ブルックナーとドイツ音楽における合唱音楽を築き上げてきた三人の作曲家によるアカペラ合唱曲で、個人的には、全て初めて聴く曲です。
バッハもメンデルスゾーンもブルックナーも自分にとっては親しい作曲家ですが、考えてみるとバッハと言えばカンタータや受難曲、あるいは器楽曲はよく聴きますが、モテットまではさすがに手が伸びない。メンデルスゾーンもブルックナーも自分にとっては交響曲など器楽の作曲家の印象が強く、アカペラ合唱曲があることすらほとんど知らなかったです。
プログラムの構成はバッハの間にメンデルスゾーンとブルックナーを嵌めるというもので、バロック末期とロマン派音楽の関係性を示そうとしたもの。メンデルスゾーンはバッハの蘇演者であり、バッハを非常に敬愛していたわけですが、こうやって続けて聴くと、バッハの輪郭線のはっきりした音楽と、メロディが美しいメンデルスゾーンの音楽の時代的な違いと、それでいながら、和声の美しさの共通性のようなものが感じられて面白かったです。ブルックナーも単独で聴くと結構単彩色の墨絵のような音楽に聴こえることが多いのですが、バッハに挟まれると、ずっと色彩豊かに聴こえるから面白いものです。
音楽技術的にはバッハの方が断然難しいと思います。全て4声×2の二重合唱曲で構成がかっちりとしていて複雑です。その複雑な音楽をあれだけ明晰に歌って見せるところ、さすがにドイツの合唱団だなと思いましたし、また、ドイツ1の室内合唱団だなとも思いました。
演奏ですが、全体的には見事なものでした。概ね精緻で、透明感があり、一方でメンバーそれぞれの自発的な力も生かされた、美しくも雄弁な合唱です。綺麗な和音がまとまった時、倍音がオペラシティの空間を埋め尽くします。これこそ合唱音楽の聴く醍醐味です。歌い方も柔らかく入って、中でふわっと盛り上がりというスタイルを取って、声をぶつけたり押したりすることがほとんどない。それでいながら密度は高く、フォルテシモの迫力は素晴らしいものがあります。個々人の力が一定水準以上で、更にちゃんと練習して響きを合わせているからこのような音楽になるのでしょう。
合唱をやっているアマチュアのひとりとして、こんな合唱をやってみたいな、とつくづく思いました。
とはいえ、満点の演奏ではありませんでした。結構いろいろなことをやらかしていました。一番思ったのはバスが結構重い。微妙に出のタイミングが遅れるところが何度もありました。また、「歌い方も柔らかく入って」と書きましたが、これがメゾフォルテぐらいの音量で入るときはそんなことはないのですが、ピアニシモで始めるときは、かすれてしまうようなところもありましたし、この盛り上がり方ももっと風船が膨らむように綺麗に膨らんで欲しいところですが、そうではないところもありました。
そういうところは自分たちで合唱をやっていてもなかなか上手くいかないところであり、世界トップクラスの合唱団でも完全に解決できているわけではない、ということを知って、ちょっと安心しました。
個人的に一番気に入ったのはメンデルスゾーン。ブルックナーもよかったです。バッハは真ん中で歌われた《来たれ、イエスよ、来たれ》がよかったです。
アンコールは日本語で「朧月夜」ジャスティン・ドイルの編曲によるもの。
衣裳は、女声は臙脂色のローブ・モンタント、男声は燕尾服の正装。前後半で衣裳替えはありませんでした。
東京オペラシティコンサートホール1632席は9割ほどの入りで盛況。客層は中高年の男性が多く、「お前も来ていたのか」という感じ恵あいさつされていた方が多かったので、合唱経験者が多かったのかもしれません。 |
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