投稿日:2011年07月07日 (木) 22時29分
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2011年7月6日 5階R2列11番 D席 5000円 平成23年度文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業) 主催:公益財団法人東京二期会/財団法人読売日本交響楽団
東京二期会オペラ劇場 オペラ3幕 字幕付原語(イタリア語)上演 プッチーニ「トゥーランドット」(Turandot) 台本:ジュゼッペ・アダーミ/レナート・シモーニ 原作:カルゴ・ゴッツィ フィナーレ補作:フランコ・アルファーノ 会場:東京文化会館大ホール
指揮:ジャンルイジ・ジェルメッティ 管弦楽:読売日本交響楽団 合唱:二期会合唱団 合唱指揮:佐藤 宏 児童合唱:NHK東京児童合唱団 児童合唱指導:金田典子
演出:粟國 淳 装置:横田あつみ 衣裳:合田瀧秀 照明:笠原俊幸 振付:松原佐紀子 舞台監督:大仁田雅彦 公演監督:大島幾雄
キャスト トゥーランドット姫 横山 恵子 カラフ(王子) 福井 敬 リュウ(ティムールに仕える奴隷) 日比野 幸 皇帝アルトゥム 田口 興輔 ティムール(退位したタタール王) 佐藤 泰弘 ピン(大臣) 萩原 潤 パン(大臣) 大川 信之 ポン(大臣) 村上 公太 役人 小林 昭裕
感想 スペクタクル!・・・・東京二期会オペラ劇場「トゥーランドット」を聴く。
今回の上演は、2009年の神奈川県民ホールで上演した「びわ湖ホール/神奈川県民ホール」共催の「トゥーランドット」の焼き直しです。粟國淳のこの舞台は、2009年に見たとき、大変感心したのですが、今回2年ぶりで見て、やはり見ごたえのある舞台であると思いました。なんといっても現代を意識しながらも、そこに永遠、あるいは普遍なものを見ようとする姿勢が面白く思いました。
一昨年の沼尻竜典の音楽作りは、デュナーミクをしっかりとった幅の大きな音楽で、しゃっきりした音作りは、このプッチーニの名作の現代性をよく示して秀逸だったと思いますが、今回のジェルメッティ/読響の演奏は、沼尻の演奏よりも、ずっと重厚なものになっていたように思います。もともと読売日響は、厚みのあるドイツ的な音響を得意とする楽団ですが、ジェルメッティというイタリアオペラの手だれが指揮することによって、イタリアオペラらしいイディオムを注入することにより、ドイツ的重厚さとイタリア的声の魅力が交じり合って、このオペラの持つスペクタクル的魅力が前面に押し出された演奏になりました。その重厚な迫力が魅力です。
この重厚な迫力に全く負けることがなく対応したのが、外題役の横山恵子。細かいことを申し上げれば、音を外したと思しきところが一箇所あったのですが、それ以外は、実に素晴らしいドラマティックな歌唱でした。日本人歌手がトゥーランドットを歌う と、どうしても声が限界に達して無理が出ることが多いのですが、さすがに日本人ドラマティック・ソプラノの第一人者。どこまで行っても、声に余裕があるのではないかと思わせる歌唱には脱帽です。
また、横山だけが、オーケストラがフルに鳴らしたときでも、声をその上に乗せることができていました。文句なしにBravaです。
福井敬のカラフは、手馴れた感じがして、さすが福井節といったところです。しかし、第一幕は、喉が十分に開いていない印象で、硬い感じがしました。一方、一番の聴かせどころである「だれも寝てはならぬ」は、さすが福井の歌唱、とでも言うべき名唱でしたが、正確さに一部欠けるところがあって、画竜点睛に欠く、感じでした。
日比野幸のリュウは、とても美しい声なのですが、やや軽い声で、リュウに期待される強くて深い声は出せない感じです。フォルテシモでヴィヴラートがかかるところがこの方の限界なのでしょう。リュウの死「氷のような姫君の心も」ではオーケストラに負けておりました。ここで、オーケストラをねじ伏せて、リュウの愛と意志の強さを示すことができれば最高だったのですが。
田口興輔のアルテゥムは、2年前の神奈川公演よりは響かない感じでした。会場の理由なのか、田口自身の衰えなのかはわかりませんが、もう少し、声が伸びてほしいと思いました。
佐藤泰弘のティムールは良好。佐藤はいつもよい、というタイプの歌手ではないのですが、たまにとても魅力的な歌を聴かせます。今回は素敵なほうの歌唱でした。
ピン、ポン、パンの三大臣は魅力的。ただ、テノールの一人が途中で声のバランスが悪くなったのが残念でした。
小林昭裕の役人は声量不足。冷酷な役柄で、この方の一声がトゥーランドット姫の冷酷さをさらにアピールするので、もう一声強い声がほしいところです。
以上、歌手陣には若干の弱さが認められたものの、指揮者、オーケストラ、主役が文句なく素晴らしく、カラフ、リュウにもそれなりの人を得たことが成功の秘訣だろうと思います。Bravaを申し上げるべきだろうと思います。 |
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