投稿日:2011年01月04日 (火) 07時03分
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例年、正月休みの掉尾を飾るのはNHKニューイヤーオペラコンサートです。今年で54回目、今年も晩酌の杯を片手に聴きました。
まずはプログラムの紹介から。
第1部 ■ヴェルディ 歌劇「アイーダ」から「エジプトとイジスの神に栄光あれ」合唱
■グノー 歌劇「ロメオとジュリエット」から「わたしは夢に生きたい」幸田浩子(ソプラノ):ジュリエット/東京シティ・バレエ団
■マスネ 歌劇「ウェルテル」から オシアンの歌「春風よ、なぜわたしを目覚ますのか」望月哲也(テノール):ウェルテル
■モーツァルト 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」から、酒の歌「みんな楽しくお酒を飲んで」黒田 博(バリトン):ドン・ジョヴァンニ
■モーツァルト 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」から二重唱「お手をどうぞ」林正子(ソプラノ):ツェルリーナ/黒田博(バリトン):ドン・ジョヴァンニ
■ロッシーニ 歌劇「タンクレーディ」から「恭しくあがめ奉る公正なる神よ」高橋薫子(ソプラノ):アメナイーデ/合 唱
■サン・サーンス 歌劇「サムソンとデリラ」から「あなたの声に心は開く」林美智子(メゾ・ソプラノ):デリラ
■ジョルダーノ 歌劇「アンドレア・シェニエ」から「ある日、青空をながめて」:水口聡(テノール)シェニエ
■プッチーニ 歌劇「トスカ」から「歌に生き、恋に生き」松田奈緒美(ソプラノ):トスカ
■プッチーニ 歌劇「トゥーランドット」から「誰も寝てはならぬ」福井敬(テノール):カラフ/合唱
■プッチーニ 歌劇「ボエーム」から「さようなら」〜第3幕の幕切れ 砂川涼子(ソプラノ):ミミ/樋口達哉(テノール):ロドルフォ/臼木あい(ソプラノ):ムゼッタ/宮本益光(バリトン):マルチェルロ ---------------------------------------------------------------------------- 第2部 ■リスト生誕200年 リスト「リゴレット・パラフレーズ」アリス・紗良・オット(ピアノ) ----------------------------------------------------------------------------
第3部 ■ヨハン・シュトラウス 喜歌劇「こうもり」から「夜会は招く」/「お客を呼ぶのはわたしの趣味で」合唱/小山由美(メゾ・ソプラノ);オルロフスキー公
■リヒャルト・シュトラウス 歌劇「ばらの騎士」から、オックス男爵のワルツ〜第2幕の幕切れ 妻屋秀和(バス):オックス男爵/森山京子(メゾ・ソプラノ):アンニーナ/東京シティ・バレエ団
■チレーア 歌劇「アルルの女」から「ありふれた話」(フェデリコの嘆き)佐野成宏(テノール):フェデリコ
■カタラーニ 歌劇「ワリー」から「さようなら、ふるさとの家よ」木下美穂子(ソプラノ):ワリー
■ヴェルディ歌劇「マクベス」から「裏切り者め!」〜「哀れみも、誉れも、愛も」堀内康雄(バリトン):マクベス
■ヴェルディ歌劇「椿姫」から乾杯の歌「友よ、さあ飲みあかそう」及び「ああ、そはかの人か」〜「花から花へ」 大村博美(ソプラノ):ヴィオレッタ/福井敬(テノール):アルフレード/合 唱
■ヨハン・シュトラウス 喜歌劇「こうもり」から「ぶどう酒の燃える流れに」 全員合唱
出演された歌手の方々は、今の日本のオペラ界を見るときに、ほぼ順当と申し上げてよいでしょう。あの方が抜けている、とか、あの方よりもこの方に入って頂きたい、という部分はありますが、歌手のスケジュールもあるでしょうし、仕方がありません。
しかし、曲は、もう少し、歌手の声の特徴を見て選んであげればよいのに、という印象です。ニューイヤーオペラコンサートは、NHKが歌手に曲を指定して、歌ってもらうようですが、番組のプロデューサーは、番組構成をよく考えて適当な歌手を選ぶか、もし、先に歌手がいるのであれば、その歌手の声が一番光る歌を歌わせてあげるのが良いと思います。ガラ・コンサート何ですから、その歌手の不得意なところで、勝負させるのはよろしくありません。
番組全体としては、昨年のようなへんてこな演出もなく、まあまあすっきりしたもので結構。
指揮の広上淳一、演奏の東京フィルハーモニー交響楽団、合唱の二期会+藤原+新国立劇場合唱団のグループは、いつものことながら、良好なものだったと思います。
寸評を簡単に。
幸田浩子:彼女の声にぴったりの一曲。上手ですが、少し重い印象。もう少し軽く歌えると、この曲の良さが更に引き立ちます。 望月哲也:力強い歌唱が好印象。良かったと思います。 黒田博:今、日本でドン・ジョヴァンニ歌いと言えばまず黒田でしょう。それだけの貫禄と余裕がありました。 林正子:ゼルリーナの声ではありません。もっと軽い声の方に歌ってもらうか、林で、ドン・ジョヴァンニの中の曲を歌ってもらうのであれば、ドンナ・アンナのアリアが適当 高橋薫子:文句なし。あの長くて技巧的なアリアを、あそこまで歌えるのは高橋しか考えられません。 林美智子:今の林の声にちょうど合った妥当な選曲。楽しめました。 水口聡:水口に向いた選曲です。「頑張って、歌っているよ」という雰囲気が出過ぎるのが、一寸鼻につきましたが。 松田奈緒美:きちっと歌えているのですが、何かが足りないです。私は、今回出場歌手の中で、この方だけ、オペラの舞台姿を一度も見たことがない。舞台経験が少ないことが影響しているのかもしれません。 福井敬:福井敬の18番。ごちそうさまでした。 砂川涼子:上手です。今、日本一のミミ歌いかもしれません。 樋口達哉:声の張り上げ方をもうひとつ工夫してほしい。 臼木あい/宮本益光:二人ともぴったりの役柄ですが、この部分では、脇役以外の何物でもありません。 アリス・紗良・オット:休憩時間のお楽しみ、ということでしょう。リスト生誕200年とオペラとの組み合わせと言うとこの曲になるのでしょうね。 小山由美:小山みたいな名歌手に、オルロフスキーを歌わせるところが、ニューイヤー・オペラコンサートの醍醐味の部分があります。 妻屋秀和/森山京子:妻屋のとぼけた雰囲気が結構。 佐野成宏:多分、声と役柄はあっているのでしょうが、不調。声が割れていました。 木下美穂子:上手です。何も申し上げることはありません。 堀内康雄:ヴェルディのこういう役を歌わせると、今、堀内より良く歌える日本人歌手を私は知りません。 大村博美:ミス・キャストの典型。大村ならば、蝶々夫人のような、もっと重い役がよいです。ヴィオレッタを歌わせたいなら、それに向いた、森麻季とか、澤畑恵美などを呼ぶべきでしょう。
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