投稿日:2009年06月03日 (水) 21時41分
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6月1日東京オペラシティコンサートホールでMusic Tomorrow2009を聴いて参りました。 今年のN響委嘱作品・斉木さんの「モルフォゲネシス」は、とてもおもしろく、迫力があり変化に富んだ躍動感のある曲でした。鳥のさえずりなどが聞こえますが、心拍の音も聞こえるので、ものすごい盛り上がりのところ、きっと臨死とはこんなものじゃないかと思いました。その後の静けさはあの世でしょうか、この世でしょうか。また聴きたいと思います。 藤倉さんの「secret forest ensemble」は、少ない人数の弦がステージの上にいて、1階客席には、後方は見えませんでしたが、前方両側にフルート、クラリネット、横の通路両側にホルン、中央にファゴット、後はオーボエ、トランペット、トロンボーンが配されていたのだろうと思います。ちょっとおとなしめな感じだなあと思っているうちに、後半は弦楽器の手が千切れんばかりのトレモロの連続でした。どうもピックでかき鳴らしているようです。客席の管楽器がたいへん面白く、特にファゴットは大ソロ、水谷さんの素晴らしい演奏が聴けました。他の管楽器奏者は雨の音の筒に持ちかえて、ホール全体にザザーという音が広がりました。ノットさんは右や左から後へ指揮するという大活躍です。この曲もとても楽しめました。
リゲティのヴァイオリン協奏曲。最弱音から始まる第1楽章はオーケストラとかなり同化しているような感じです。数日前、音楽の心象風景を描いた庄司紗矢香さんの絵画の個展を京橋で見てきたのですが、第2楽章冒頭のソロ部分の絵もありました。どこか懐かしいような広々とした田園風景を地平線にあるヴァイオリンを弾く手が包み込んでいるような作品でした。その絵は茶系統の色使いでしたが、私はこのコンサートで聴いて、なんとなくブルーグレーを思い浮かべました。ソロヴァイオリンのなみなみとした音色に包みこまれるような中、おもしろい音がすると思うと水谷さんや加藤さんがオカリナを吹いておられ、ちょっと愛嬌のある音が怖いようなヴァイオリンとの対比を浮かび上がらせていました。複雑で色々な音やリズムが繰り出され、最後はものすごく早くて、コントラバスは殆どコマのあたりまで両手が及んでいましたし、チェロのピッツィカート、藤森さんはついに右手で弦を押さえていらっしゃいました。 確信を持った指揮者のもと、小柄なソリストが強大な力を発していて、且つオーケストラもとても上手なので、名演だったと思います。
N響 Music Tomorrow 2009 指揮:ジョナサン・ノット ヴァイオリン:庄司紗矢香 管弦楽:NHK交響楽団
原田敬子:エコー・モンタージュ―オーケストラのための(2008) [第57回「尾高賞」受賞作品] 斉木由美:モルフォゲネシス [N響委嘱作品・世界初演] 藤倉大:secret forest ensemble(2008)[第57回「尾高賞」受賞作品] ジェルジ・リゲティ:ヴァイオリン協奏曲(1992) |
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