投稿日:2009年03月01日 (日) 23時13分
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2月27日金曜日、東京芸大の学生さんによる室内楽の演奏会に伺いました。
佐々木萌絵&梶彩乃 フルートとハープの夕べです。佐々木、梶ともまだ東京芸大在学中の学生さん、賛助出演したヴィオラの原裕子もまた学生ということで、学生の学習の成果を聴いたところです。
プログラムは以下のとおり。 サン=サーンス 幻想曲 作品124(フルート&ハープ) ポッセ ヴェニスの謝肉祭による変奏曲(ハープ) ダマーズ フルートとハープのためのソナタ(フルート&ハープ) 休憩 武満徹 「そして、それが風であることを知った」(フルート、ハープ&ヴィオラ) ケックラン フルートのためのソナチネ(フルート) ドビュッシー フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ(フルート、ハープ&ヴィオラ) アンコール ビゼー 劇音楽「アルルの女」よりシシリアーノ(フルート&ハープ) バースディソング アベシュンスケ編曲
フルートとハープで一夜のプログラムを組むのは至難の業だと思います。フルートとハープは相性の良い楽器で、モーツァルトがあの名曲「フルートとハープのための協奏曲」を書いたことからもよく分るのですが、この曲を別にすると有名な曲はほとんどないはずです。
私は今回のプログラムの曲で実演経験のある作品は皆無。ドビュッシーの「フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ」はランパル(Fl)、ラスキーヌ(hp)、パスキエ(Va)という古典的名盤を持っているので、これだけは親しみがありましたが、ほかは、全て初めて聴く曲です。
こういう意欲のあるプログラムを組むということは大変結構なことで、まずそこは好感が持てます。若い方はチャレンジしてナンボです。
曲夫々の感想です。
最後のドビュッシーは一言で申し上げるならば楷書体のドビュッシーで、もっと柔らかくもっとアンニュイな雰囲気を入れないと曲の本来の魅力を引き出すことにはならないと思うのですが、とてもそこまで至らなかったということなのでしょうね。第一楽章は「田園」とタイトルが着くように田舎ののびのびした気分が欲しいところですが、残念ながらそうは行かない。特にハープは技術的にも今ひとつのところがあった様で、もう少し手さばきが巧みであって欲しいと思いました。
他の作品はどれも初耳の曲なので、良し悪しは申し上げにくいのですが、休憩前は、二人とも緊張していたようで、伸びやかさが感じられませんでした。ただその方向が攻めのフルートと受けのハープという感じがあって、一寸ちぐはぐな感じがしました。
三曲目のダマーズの曲は、サティを髣髴させる作品。サティの作品の持つ脱力感のような雰囲気を出せれば良いのでしょうが、前述のようにフルートは攻めすぎでハープは受けと守りとで精一杯という印象がありました。
一番印象的だったのは、武満の作品。こういう作品を聴くと武満は徹底的に日本の作曲家だったし、また誰にも真似できない世界を持っていた人なのだな、と思います。聴いていて面白い作品ですが、演奏するのが日本人だと多分日本人にしか分らない雰囲気がにおってくるようで、そこが特に楽しめました。
ケックランのソナチネは、単旋律楽器の限界を感じさせるもの。フルートの可能性を示した作品ではありますが、ありていに申し上げればそれほど面白い曲ではありません。フルートはオーケストラや室内楽など組み合わせてこそ生きる楽器なのだな、と感じさせられました。
結局のところ、演奏のレベルは、正直申し上げれば学生のレベルを抜け出ておりません。技術的な面はともかく、音楽性の表出という点で今ひとつだと思いました。今後の精進に期待しましょう。
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