投稿日:2008年07月29日 (火) 00時11分
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東京室内歌劇場のオペラ『夜長姫と耳男』を観ました。 間宮芳生さんの音楽は太棹三味線が入っていたり、フルートを尺八のように吹いたりしても日本調ではなくジャズ風ともいえる感じでした。ものすごく難しそうな歌を、歌手の方々は歌い切りましたが、夜長姫の大貫裕子さんは強いソプラノでわがままな夜長姫を演じ、最後についに耳男に刺殺されるまで、はっきりした日本語が聞こえる素晴らしいものでした。可愛らしい微笑みがなんとも恐ろしかったです。耳男の太田直樹さんは、夜長姫に魅せられて屈折していく自分でもどうしようもない状態の苦しさのようなものを、実に巧みに歌っていたと思います。ストーリーテラー的役割のアナマロ多田康芳さんも歌詞がよく聞き取れ、一幕のこのオペラを集中して聴くことに一役買っていたと思います。「好きなものは呪うか殺すか争うかしなければならないのよ・・・立派な仕事をして・・・」というクライマックスでは、心が震える思いがしました。 バルコニー席で、舞台の全体は見えませんでしたが、彼岸と此岸をあらわしているらしい彼岸花やからたちの枝が、なんとも不気味でした。上がり下がりするハーフミラーを使用していましたが、その中は見えなかったので、何の効果をねらったものかは、良く解りませんでしたが、第一生命ホールのような室内楽向きのホールで最大限工夫してあったのではないかと思います。寺嶋陸也さんの指揮は見えなかったけれど、非常に明晰な音楽づくりだったように思います。
原作:坂口安吾 台本:友竹正則 作曲:間宮芳生
指揮:寺嶋陸也 演出:中村敬一
夜長姫(ソプラノ):大貫裕子 耳男(バリトン):太田直樹 夜長の長者(テノール):吉田伸昭 アナマロ(バリトン):多田康芳 エナコ(ソプラノ):松本薫
太棹三味線:田中悠美子 ヴァイオリン/ヴィオラ:手嶋志保 チェロ:松岡陽平 フルート1st:中川昌巳 フルート2nd:西村いづみ クラリネット/バスクラリネット:伊藤紀江 パーカッション:山口泰範 ピアノ/チェンバロ:藤原弥生
第一生命ホール |
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