投稿日:2007年01月06日 (土) 12時17分
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そして、本年の正月の白眉は何と申しましても「NHKニューイヤーオペラコンサート」でしょう。多分、私がこの番組を聴き始めて、総合的には今年が一番よかったと思います。 まずはプログラムを紹介します。
ヴェルディ“椿姫”から“乾杯の歌 友よ、さあ飲みあかそう” 佐野成宏(T)/大村博美(Sop)/ 二期会合唱団/藤原歌劇団合唱部/東京混声合唱団 プッチーニ “トゥーランドット”から“お聞きください” 砂川涼子(Sop) プッチーニ “トゥーランドット”から“誰も寝てはならぬ” 福井敬(T) モーツァルト“魔笛”から“復讐の心は地獄のように胸に燃え”臼木あい(Sop) ヴェルディ“椿姫”から“プロバンスの海と陸”堀内康雄(Br) プッチーニ“蝶々夫人”から“ある晴れた日に”木下美穂子 モーツァルト“フィガロの結婚”から 小二重唱“三尺、四尺、五尺” 黒田博(Br)/半田美和子(Sop) “もう飛ぶまいぞ、この蝶々” 黒田博(Br) “愛の神よ、照覧あれ” 佐々木典子(Sop) “恋とはどんなものかしら” 林美智子(MS) 六重唱“おかあさんをよく見ておくれ” 竹本節子(MS)/黒田博(Br)/加茂下稔(T)/半田美和子(Sop)/鹿又透(Br)/鹿野由之(Bs) ヴェルディ“トロヴァトーレ”から“炎は燃えて”/“重い鎖にしばられて” フィオレンツァ・コッソット(MS) 「Bienvenidos al Mundo」/「楽しい思い出はどこへ“フィガロの結婚”から」小曽根真(pf) ヨハン・シュトラウス “こうもり”から“夜会は招く”二期会合唱団/藤原歌劇団合唱部/東京混声合唱団 ヨハン・シュトラウス “こうもり”から“侯爵様、あなたのようなお方は” 高橋薫子(Sop)/二期会合唱団/藤原歌劇団合唱部/東京混声合唱団 グノー“ファウスト”から“この清らかなすまい” 望月哲也(T) リヒャルト・シュトラウス“ナクソス島のアリアドネ”から“偉大なる王女さま”天羽明惠(Sop) チレーア“アドリアーナ・ルクヴルール”から“わたしは神のいやしいしもべです” 大村博美(Sop) プッチーニ“トスカ”から“テ・デウム”直野資(Br)/二期会合唱団/藤原歌劇団合唱部/東京混声合唱団 ヴェルディ “リゴレット”から 四重唱“美しい乙女よ” 村上敏明/森山京子/高橋薫子/堀内康雄 プッチーニ“トスカ”から“星はきらめき” 佐野成宏(T) ビゼー“カルメン”から ハバネラ“恋は野の鳥”藤村実穂子(MS)/二期会合唱団/藤原歌劇団合唱部/東京混声合唱団 ヨハン・シュトラウス“こうもり”から“ぶどう酒の燃える流れに”全員 飯森範親/東京フィルハーモニー交響楽団
今回の特徴は、中堅・若手の実力派の歌手で固めた、ということでしょう。更に申し上げれば、皆第一線で活躍されている方です。昨年1年間、私は60回ほどのオペラ/コンサートを鑑賞しておりますが、昨年聴いていないのは、佐野成宏、臼木あい、砂川涼子、鹿又透の4人で、他の方は昨年一度は聴いているわけですから、いかに旬の歌手を集めたかが分ります。昨年聴かなかった4人にしても、過去2-3年まで範囲を広げれば全員聴いた事がある。そして、それぞれが実力者であり、全体が水準以上だったと思います。
特に今回は、「フィガロ」から何曲か取り上げていますが、このメンバーは昨年9月の二期会公演とほぼ同じです。(違うのは、あの時伯爵を歌っていた黒田さんがフィガロに回り、鹿又さんが伯爵に入ったこと。スザンナが半田さんになったことです。)そういうところからも現在の日本のオペラ界をきっちり見せてくれたガラコンサートと申し上げるべきでしょう。
さて個別評ですが、簡単に。 「乾杯の歌」:大村博美はヴィオレッタを歌うには、一寸声が重いと思いました。 「誰も寝てはならぬ」:さしもの福井敬もヴィブラートの幅が広がり始めています。 半田美和子のスザンナ。微妙に声量が乏しいところが気になりました。 「偉大なる王女さま」:最初一寸オーケストラと会わなかったのですが、途中でしっかり修正。この難曲を十分聴かせました。 他は、自分の持ち役の得意曲ばかりですから、悪いわけがありません。
コッソットの歌は、巨匠の演奏でした。何でもありです。年齢から言えば、あの歌を聴かせられるのは流石と申し上げるしかないのですが、まあ、声の老化は隠せません。高い音はもう出ませんし。でも、やはり何でもないところでの説得力は若い歌手には出せないものです。
今回登場した歌手の中で一番若い方は臼木あいですが、臼木の歌は技術的にはほぼパーフェクトと申し上げて過言ではない。夜の女王のアリアで最高音を軽々と出すわけですから、たいしたものです。でも彼女は中低音のなんでもないところが、のっぺらぼうです。そこが未だ若い証拠な訳で、今後どのように表現力を着けて行くか、興味が持てるところです。
とにかく、総じていい演奏でした。ガラコンサートの醍醐味を味あわせてくれるものでした。
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