投稿日:2006年12月18日 (月) 23時14分
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昨晩、新日本フィルのサントリー定期を聴いてまいりました。
指揮:小澤征爾 オーケストラ:新日本フィルハーモニー交響楽団 ピアノ・ソロ:ユンディ・リ コンサートマスター:崔文洙 プログラム: プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 ト短調作品16 チャイコフスキー 交響曲第1番 ト短調作品13「冬の日の幻想」
一言で申し上げれば、オーケストラを聴く楽しみを満喫させてくれた演奏会でした。
プロコフィエフは、ユンディ・リのピアノが素晴らしい。プロコフィエフの細かな音符がピアノの88鍵を縦横に走り回る難曲ですから、名手リと雖もノーミスとは行かなかったようですが、その力強さとダイナミクスは並大抵のものではありません。特に第2楽章スケルツォの疾走は、正に胸のすくもの。本当に感心いたしました。第3楽章のスタカートの切れも抜群。このアクロバチックな名曲の本当の姿を見事に指し示したと申し上げても許されるでしょう。片足でペダルを踏み、もう片足でリズムを取りながら激しく打鍵する姿は特に素敵でした。
リのおじいさんほどの年齢の小澤は、やんちゃな孫を慈しむかのように、アイ・コンタクトを取りながらオーケストラをコントロールしていきます。指揮とピアノの息が正にぴたりと合って、間然とするところがありません。名演だったと思います。
リはアンコールとして、ショパンのノクターン第2番を演奏しましたが、こちらは正確ですが、情感が今ひとつ。彼には現代ものがよく似合うと思いました。
チャイコフスキーも名演。この曲は本年2月NHK交響楽団の定期演奏会でアシュケナージが取り上げていますが、小澤とは芸の格が違います。オーケストラの個人技ではN響に劣ると思われる新日フィルが、音楽性と云う点では、アシュケナージ/N響を完全に凌駕しておりました。
これは、小澤の指揮ぶりが柔らかさとダイナミズムを兼ね備えたところにあるのだろうと思います。小澤は指揮棒を持たずに演奏したのですが、手の脱力と体全体に見える力強さのマッチングにすこぶる説得力があるのだろうと思います。
このような指揮をされれば、オーケストラ・プレーヤーも乗らずに入られません。古部さんのオーボエの音色が素晴らしく、それを下支えするファゴットの音色。ヴィオラの柔らかい音色も魅力的でした。
小澤健在を感じさせてくれた名演奏だったと思います。
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