この春、〈モーニング娘。〉を卒業した。
　
□楽屋の入り口や、台本のキャスト一覧で、〈中澤裕子〉という名前を目にすると、「あたしなんだけど、『だれだろうなあ』と思う時があるんですよねえ」と言う。ソロ活動は、卒業前からしてはいたものの、常に一人というのは、やはり勝手が違う。

「グラビア撮ってる時も『集合写真ないの？』『ないよ！』って。もう、メンバーが私の撮影が終わるのを待ってるわけじゃない。私が用意できればスタートして、それが終われば、もう終わり」今まで、何度もやったことのある仕事でも「なんか、すごい緊張する。なんだか知らないけどドキドキする」。正直、こわい。
　
「でも、やらなきゃしょうがないし、行かなきゃしょうがない」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　初挑戦の連続ドラマ「ビューティ７」は、エステサロンが舞台。そこには、自分を変えたいと願う女性が次々と訪れる。「私が外見的に変化したいなあっていう時は、飽きてる時なんですよ、いろんなことに。欲求不満になってる時。なーんか最近つまんないな、とか。そんな時、髪の色でも変えたり、ネールサロン行ったり」
　
見た目だけの問題じゃない。
　
　「どういうふうになるんだろうって考えているうちに、いやなことも忘れられる」そんな気分転換も、モーニング時代は、思う存分というわけにはいかなかった。「やっぱりグループでやってると、同じ髪形とか色にしたくないじゃないですか。だけど十人もいると、できるものって限られてくるんですよね」
　
　あまりにも若いメンバーたちと一緒にいたので、必要以上に年齢のことを気にしてしまった部分もある。十代前半の女の子たちと「目に見えて比較しやすい」状態で、人前に立っていた。「実際、十四歳や十五歳の女の子たちの素肌って本当にきれいじゃないですか。ああ年取るのってやあねって思ってました」衣装の割り当てでも、「かわいい洋服だなあ、でも絶対あたしのじゃないなとかね。もちろん、イメージに合うかどうかっていうのもあるんだけど、もうちょっと若かったら着られたなっていうのはあるんですよ」
　
　一人になった今、そういうことはあまり考えなくて済む。「でも、もう少し若ければなあっていうのは、やっぱり常に思ってる」“モーニング娘。の強気な姉御”というイメージの下に隠れていた、揺れ動く思い。さばさばと正直に話すから気付きにくいが、本当はかなり、いじらしい。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

□次はないかも、間違えたらどうしよう……。そんな不安感が、夢の中にまで入り込んできて、よく眠れないことも多い。「でも仕事は好き、かなあ」むしろ、「緊張感がなくなったらやめる時」だと思っている。「これサイコー！ってものを、あたしはまだ出してない気がするんです。もう、目いっぱいやってるんです。目いっぱいやってるんだけども、それが自分のすべてと思いたくないし、まだまだできるんだって可能性を信じたい」
　
なぜ、そう頑張るのか。

「自分が生きてるって感じがしてるのが、好きなんだと思いますよ。中澤裕子という人間がちゃんとここにいて、中澤裕子だからって求められたらうれしいし、そういうふうになりたいと思ってやってるし」
　
『中澤裕子』であるために。だから前に踏み出す。こわくても、一人でも。
　
　
　〈聞かせて〉
Ｑ　カラーコンタクトを使っていますよね。
　
Ａ　入れてます。自分で自分の顔に飽きるっていうとおかしいんですけれど、なんかこう、変化が欲しいと思って。ドラマの時とかは普通のですけど。最近の髪の色にはグレーがなじみますね。金髪の時はあえてブルーとか。気分によって変えますね。
　
Ｑ　もんじゃ焼きが好きだそうですが。
　
Ａ　東京に来てから初めて食べました。連れてってもらう時に「たぶん、関西の人は好きじゃないんじゃないかなあ」とか言われたんですけど、食べてみたら「んー！　うまいじゃん」とか思って。たまに食べに行きたくなるんですよね。
　
Ｑ　ストレス解消法を教えて下さい。

Ａ　何だろうなあ。その前に今、ストレスあるかな？　あんまりストレスというものを感じないんです。わからないんです。よく「ストレスがたまって」とか言う人いるでしょ。でも、ストレスって目に見えるもんじゃないのに、なんでたまったってわかるんだろうとか思っちゃうんですよね。「そういう人は知らない間にストレスがたまって危ないんだよ」って言われるんですけど、いいんじゃないかなあって、思って。