| モーニング娘。 かわいさ等身大に共感 |
朝日新聞
|
20歳前後の青年たちがステージに向かって野太い声を張り上げる。そのそばでは、10歳くらいの女の子が声援を送り、隣では母親が楽しげにリズムをとる。この正月、東京・中野サンプラザで開かれた「モーニング娘。」のコンサートには、幼児から40〜50歳代の大人まで、実に幅広い年齢層が集まった。お父さんに肩車してもらっている幼稚園児や、メンバーの名前入りの鉢巻きをしめた小学生も、アイドル好きのお兄さんに負けない勢いだ。 テレビ番組のオーディションから生まれたアイドルグループ「モーニング娘。」は、メンバーの脱退、加入を繰り返し、現在は13人。最年少は13歳で一番年上が21歳。ミリオンセラーを連発し、この年末年始のテレビにも、絶え間なく登場していた。 97年の結成当初は昔ながらの女性アイドルグループで、10〜20代の男性ファンが多かったが、「LOVEマシーン」が大ヒットした99年以降は、ファンの年齢層がぐっと下がり、一気に拡大した。ファンの低年齢化を決定づけたのは00年に生まれた「ミニモニ。」。メンバー3人と関連グループの1人で結成したユニットだ。共通点は「身長が150センチ以下」。年齢は18歳から13歳までと幅があるが、単に「体が小さい」ことだけで集まった。 テレビ東京系の子ども向け番組「おはスタ」では、ミニモニをまねて歌い踊る子どもたちの投稿ビデオコーナー「マネモニ」が人気を集め、週に100を超える応募があるという。公開中のアニメ映画「とっとこハム太郎」にも、メンバーがハムスターに変身して登場している。 「体が小さい」ことで、年齢にかかわらず「子どもっぽいかわいらしさ」を身にまとい続ける彼女たちは、衣装や歌、振り付けでも、それを強調する。そして数ある「モー娘。」関連ユニットの中でも圧倒的な人気者になった。
「モー娘。」本体の新加入メンバーも12、13歳が中心。さらに“お子さま化”は加速する。小学校高学年の女の子を主な読者とするマンガ月刊誌「なかよし」は、昨年6月号から、「モー娘」を主人公にしたマンガ「娘。物語」の連載を始めたところ、45万部だった部数が60万部にまで伸びた。「セーラームーン」(92〜97年)以来のヒット作になり、入江祥雄編集長は「70万、80万部を目指したい」と話す。 同誌の読者アンケートで、なりたい職業を問うと、かつては漫画家やアニメ声優が多かったが、5、6年前から、アイドル、芸能人が急増しているという。デビュー当時小学生もいたアイドルグループ「SPEED」が人気を集めたころからの傾向だ。「読者の気持ちの中で、アイドルという仕事が、『今なれるかもしれない仕事』になってきた」と入江さんはみる。 もっとも、幼いころから歌や踊りの訓練を重ねてきたとされるSPEEDはまだ、女の子たちにとって、「見上げる」存在だった。しかし「モー娘。」は「グループ結成からのプロセスを見せた『たいした子じゃなくても、だれでも入れるもの』。子どもたちにとって、共感できる対象としての役割モデルになっている」(小川博司・関西大学教授)。 冬休み。メンバーの写真やキャラクターグッズを売る大阪・心斎橋の「オフィシャルショップ」は小学生の女の子やお父さん、アイドルファンのお兄さんなど老若男女でにぎわっていた。「子どもっぽいかわいさ」を強化した「モー娘。」は、歌、テレビ、映画、マンガと、日本の大衆文化を席巻している。
|
|
掲載日:02/01/06 |
|