＜十勝人・新春編　移住者たち＞

カントリー娘。　戸田鈴音さん 「牛の乳搾りも上手になったんですよ」
　
真っ白な雪に覆われた中札内村の花畑牧場。まだ真っ暗な午前五時、近くの宿舎から起き出す。毎朝、馬や牛にえさをあげるのが日課。最近は犬ぞりの練習も加わった。「牛の乳搾りも上手になったんですよ。ようやく落ち着いてきたかなって感じです」
　
小さいときから歌が大好きだった。札幌の中学、高校と聖歌隊に入り、学園祭ではミュージカルを披露することも。あこがれの歌手への道。昨年春、タレントの田中義剛さんが考えた、酪農と芸能活動の両立を目指す三人グループ「カントリー娘。」のオーディションに、全国千三百人の応募の中から合格した。
　
しかし、同じ芸能事務所の「モーニング娘。」の「妹」に当たる「カントリー娘。」は予期せぬスタートに見舞われた。昨年七月のＣＤデビュー直前にメンバーの柳原尋美さんが同村内での交通事故で亡くなり、もう一人の小林梓さんも翌八月にグループを脱退した。
　
「一人になって悩みました。でも、三人でも一人でも、気持ちは一緒です。三人で誓い合った夢をかなえることが、輝いていた尋美のためにもなる。そう思ったんです」
　
もやもやした気持ちを変えるきっかけになったのが「十勝の自然や景色だった」と言う。月に一度は上京して、歌や踊りのレッスンを受けに行く。「東京で電車に乗れば満員、道路も大渋滞。もうぐったりです。でも中札内の牧場に帰って来ると、自然と落ち着くんです」
　
中札内村の最低気温は氷点下二〇度前後に冷え込む。それでも「動物たちと一緒になって走り回っていると、すぐ体も温かくなるんです」と屈託がない。
　
親代わりの田中さんの心配りも大きい。「おしゃべりのコツや体調管理なんかうるさいくらいです。本当にいい先輩です」
　
道内民放ラジオと地域ＦＭなどにレギュラー番組を持ち、十勝での暮らしを積極的にアピールする。「十勝にいたら、りんねみたいな生活ができるんだよって、一人でも多くの人に伝えていきたいですね」