◆東京・日比谷で

　アイドルグループ「モーニング娘。」の快進撃が続いている。テレビで６本のレギュラー番組を抱える中、５月３日からは東京・日比谷の日生劇場で初のミュージカル「ＬＯＶＥセンチュリー ―夢はみなけりゃ始まらない―」の１ヵ月の公演に挑む。結成以来のリーダー・中澤裕子の脱退で９人組となった新生「モーニング娘。」。本番に備えて最後の特訓に励む彼女たちを東京都内のスタジオに訪ねた。　

　「―二十一世紀だってのにぃ〜」「だってのにぃ〜」。吉澤ひとみのソロに合わせて、飯田圭織、安倍なつみ、矢口真里、石川梨華が声をそろえる。

　五人はつぶれかかった遊園地のショーのアルバイト。心に秘めた夢も、ガラガラの会場で踊る毎日では色あせがち。そしてついにこの歌で不満を爆発させるという場面だ。
　
　「やってらんねーという感じで」「”アイドルっぽく”歌って」などと指示が飛ぶと、吉澤は真剣な顔でメモを取り、すぐに“振り”を反復する。「忘れないように、図とか人の形を書き込んでいます」と吉澤。
　
　そのわきで矢口と安倍が「よっすぃー最高！」「かわいいよぉ」と茶々を入れる。だが、二人もふざけているだけではない。時間が空くと、タタタタタッと機敏にステップを確認する。「私ら五人の出番が多いんですよ。だから夜遅くでも『これから芝居、通してみない？』なんて言って練習してます」と矢口が話す。
　
　五人の周辺にいるのが、入院中の少女（辻希美）、孤独なダンサー（後藤真希）、遊園地のオーナーの娘（保田圭）だ。彼女たちが遊園地の閉鎖にもめげず、心臓病の少女（加護亜依）の手術代を稼ぐために立ち上がる姿を描く。
　
　脚本は野田治彦、音楽は、つんく。各メンバーがソロで歌う場面やヒット曲のメドレーもある。
　
　連日長時間のけいこを通して得たものは多い。「詞の内容をセリフに近い感じで歌う方法を教えていただいた」（保田）、「会場全体に届く発声法や体の動きを習ったので、びっくりするほど声が出ます」（安倍）など口々に語る。
　
　前リーダーの中澤も看護婦役で出演。「これからは良きライバル、いい仲間として頑張って欲しいですね」。エールを送られた新リーダーの飯田は「裕ちゃんが作ってくれたチームワークのお陰でいつでも一つになれる。私は一人一人が何か言いづらいことがある時に一緒に考えられるような、そんな隠れた力の持ち主になりたい」。

　このミュージカル、「モーニング娘。」が新世紀も走り続けるための起爆剤になりそうだ。
　
　
〈魅力を証言〉

　◆集中力がある

　「ＬＯＶＥセンチュリー」を演出する文学座の西川信廣氏「初めての芝居、しかも時間が十分にないので心配でしたが、予想以上の出来。一回目よりも、二回、三回目はもっと良くなる。カンがいいし、集中力がある。芝居風の振り付けには戸惑ったようですが、面白がっていた。大変でも、楽しんでやってしまうところがいいのでしょう」

　◆ガッツに感心
　
　日本テレビ系の新番組「モー。たいへんでした」の糸井聖一プロデューサー「彼女たちが困っている人を訪ねてハッピーにする番組です。最初はロケ収録に不慣れな様子でしたが、すぐにどうすれば面白くなるのかを考えて動く。また前夜がコンサートで朝から長時間の収録に臨んでも、疲れた様子を見せずにきっちり仕事をする。ガッツとプロ意識を感じますね」
　
　◆ここに注目して！
　
　飯田圭織「北海道弁で人生を語る哲学好きな役です。私の言葉を真剣に聞いて人生を考えて欲しい」
　
　保田圭「ジャズ風のじっくり聞いてもらえる歌を初めてうたいます。その歌を通して私の役柄が感じてることや思いを表現したい」
　
　矢口真里「『モー吉＆にょろ太のテーマソング』がすごい。牛や蛇のかぶりもので歌いますよ」
　
　安倍なつみ「それぞれのソロや、演技を通してこの子にはこういう一面があると気付いてもらえそう」
　
　後藤真希「今までやったことのないダンスを見せます。あとは最初に母親と会話する場面かな。セリフが難しいんですよお」
　
　石川梨華「引っ込み思案だけど一生懸命頑張っている役です。頑張る姿が伝わるといいですね」
　
　吉澤ひとみ「いろいろな格好で歌います。腕立て伏せや腹筋をしながら歌う場面もあるんですよ」
　
　辻希美「一人一人の歌ですね。私の歌は出だしの音が低いので心配です」
　
　加護亜依「私は病気の役。ふだんはすごく元気なので新しい自分が出せそう」
　中澤裕子「制服を着るとインチキ看護婦みたいになる。八割が辻、加護との絡みなので、ふだんの私を想像させるセリフが多いと思う」