投稿日:2006年04月18日 (火) 12時56分
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さっそく原作(岩波文庫)を読んでみました。まず改めて感じたのは、主人公たちが、とても若い男女だったということです。(オペラではベテラン歌手が演じているのでヴィオレッタを落ち着いた女性とつい勘違いしてしまいます)マルグリットは、気品ある美貌を謳われながら、娘らしい蓮っ葉なしゃべり方をし、(字は6年前から書けるようになったらしい)派手好き遊び好き、結構な借金まであります。アルマンには誠実ですが、例の田舎の別荘の支払いはパトロンのおじいちゃん公爵にさせたりして、わりとちゃっかりしています。一方アルマンは彼女を初めて見たとき(コルチザンとは知らず)その美貌に強く惹かれ、町で彼女を見かけるたび顔色が変わり、動悸がしたといいます。つまり、アルマンは激しい一目ぼれをしてしまった。マルグリットもまたそれにこたえるだけの恋愛能力のある女性だったわけで(死期が迫っていたことも関係していると思いますが)、原作も基本的には若い男女の純愛物語でそれなりのリアリティがありました。しかしそうなるとどうしてもモデルのマリーが貴族の奥方で死にたがったという打算的な事実だけは宙に浮いてしまいます。この全くの矛盾を抱えたまま作家がこのような思い入れのある物語を成立させることは果たして可能なのでしょうかね。ラストの真実はどうだったのでしょうか。原作ではマルグリットは差し押さえの掛かった部屋でアルマンにも会えず、苦しみぬいて死にます。残されたアルマンへの日記が愛の証を物語るのです。読んでいてつい泣いてしまいましたが、真実のラストが違うとなれば、あの涙って・・・と馬鹿馬鹿しい思いもします。デュマが創作と割り切っていたのならいたしかたないことですが。もう一つ、少し話は変わりますが、周辺を調べているうち驚くべきデュマ一族にも興味を持ちました。一族はフランス人侯爵のひいおじいちゃんが、黒人奴隷のひいおばあちゃんに子供を生ませたことから始まり、ハーフのその子は勇壮無比なアレクサンドル将軍になり、さらにその息子(つまり父デュマ)は大ベストセラー作家で、稀代の道楽者に。あちこちに子供100人作ったとか。(ジェルモンとは正反対)なんだかオペラの主人公にありそうな波乱に満ちた人々なのです。子デュマはこういった豪放さと黒人の血を引くマイノリティの家系の子孫でもあったわけです。さらにデュマ家のイヴともいうべきひいおばあちゃんは、マリー・デュマ(農場のマリーの意)と呼ばれていたらしく、子デュマは、似た名前を持つマリー・デュプレシスに運命的なものを感じたのではと、ついつい想像をたくましくしてしまいました。
顔色が変わり動悸がしたといいます。 |
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