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| No.374 あの時に戻れるなら |
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| NAME:ブンダウマムトム |
できることなら、もう1度あの時に戻って、やり直したいことがある。
名古屋の池下駅の記憶は、愛知厚生年金会館。 そして駅ビル2Fの梅光軒さん。 旭川のラーメン店、梅光軒で修行した初代が初代が昭和57年に開業したらしい。
ラーメンと言えば、ほぼ決まった店があったので行く機会はなかなか無かったが、グルメ雑誌で取り上げられるなど、行列のできる有名店だったので、いつか1度食べてみなくてはと思っていたところへ知人からある噂を聞いた。 その噂というのは「ここのお母さんは注文を書かずに記憶して、お会計までしてしまう」というもの。
休日、機会に恵まれ伺ったその日も行列ができていて、店の中に用意された待ちイスから、席が空くと次々と案内されていく。 待ちイスに座る段階でお客さんに対し、例のお母さんが1人1人の注文を聞いて行く作業が始まるのだが、注文をとってもお母さんは、メモをしない。「塩バターチャーシュー、大盛り、ネギ抜き…」お客さんの顔と注文をひも付けをしているのか、お客さんの顔を見直しては注文を復唱して、全て記憶しているようであった。
席が空けば次から次へと案内されていくから、待ちイスに座る顔ぶれもズレて動くし、誰がどこの席に案内されるか決まっているはずもない。なのに出来上がったラーメンは、1杯たりとも間違うことなく頼んだお客さんの前に置かれていった。しかも食べ終わる時間もバラバラだから、会計の順番だって、最初に注文を聞いたお客さんの順番とはグチャグチャに変わっている。 凄いものを見た。お見事の1言、噂は本当で想像以上だった。
そのあとは再訪を果たせぬまま、ついに行ったのはその1回きり。もうかれこれ30年くらい昔のはなし。
その梅光軒さん、 その後、池下駅の2Fから移転しており、令和5年3月31日には惜しまれつつ閉店されたのだそう。 閉店の頃になるとお母さん、さすがに「最近は間違えてしまうみたいでダメだ〜」と言っていたらしい。 多くの人に親しまれた光景、皆に愛されたあの味に会うことは2度とない。
と、 書き出しは、もう1度あの時に戻って、やり直したいこと、だったか。
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