「おはよう,私の領域の全て」
今日もこの殺風景な墓地を眺めながらの起床。
永遠に眠っていられるのならばそうしたい。
けれども,夜が来る度に私は目覚めてしまう。
この墓地に楽しみは無い。でも外で生きるアテもない。
色の無い日々をぼんやりと過ごす生活はこれでどのくらいになるのかしら?
「ギャンブラー ゼェットォー」
キャアァァァァァァァァァーーーー
誰ですの,あの人は!あやうく叫んでしまうところでしたわ。
怖い,どうしてこんなところへ。
「こんばんは」
「こ,こんばんは。お散歩ですか?」
「うん,楽しそうだったから」
「あの・・・もしかしてあなたは・・・・透明人間さん,ですか?」
「そう,透明人間だよ」
「私はゾンビなんです。ここに住むリデルと申します」
「リデルちゃん,いい名前だね。僕はスマイル」
「スマイルさん。親しみを持てる温かい方ですわ」
「リデルちゃんは何をやっていたの?」
「私ですか?生前は女優でした」
「女優!?すごーい」
「・・・・・外見の華やかさがありますが,実際には
この墓地のように荒れ果てたもの。私が死んでなおこうして現世に
居続けるのは,生前の名声にしがみついていたいという
あさましい心があるからかもしれません」
「苦労していたんだね」
「あっ,ごめんなさい。私ったらつい愚痴を」
「ううん,いいの。リデルちゃん,笑ってみて」
「え,そんな突然・・・・・」
「笑ったら幸せになれるよ」
「笑ってみます・・・ニッコリ」
「か,カワイィーー!かわいいよリデルちゃん!!」
「ありがとうございます。なんだか気分が軽くなりましたわ」
「僕はもう帰るね。明日また来てもいいかな?」
「ええ,お待ちしております」
この胸の高鳴りに似たものは何かしら?
明日はさらに幸せなことが起こるような気がする。
きっと体験したことのないような,ウットリとした・・・・