おかあさま、森のむこうのたてものはなんですか?
あれは駅よ
えきとはなんですか?
「汽車」という人間の乗り物があるの
ふしぎです。ほうきにのればいいのに。
そうね。あなたもいつかわかるわ。
小さい頃から「汽車」というものを自分の目で見たいと思っていた。
私は初めてホウキに乗った日、駅を見に行った。
その時、駅に汽車は来ておらず、車掌の他には少年が一人座っているだけだった。
私よりも年上らしい少年の隣に座った。
「こんにちは」
「……こんにちは」
「ここに来るのは初めてですか?」
「うぬ」
滅多に見知らぬ人と話をしない私でも、彼とはうちとけて話せた。
「おぬしはよく汽車を見るのか?」
「僕、汽車が好きなんです」
「その……私は汽車を見たことがない」
「えっ?」
「汽車というのはそんなに良い乗り物なのか?」
「はい。大きくて、とても力強い」
『ガタンガタン ガタンガタン ゴォーー』
「ビクッ」
「来ましたよ、汽車が」
汽車の地響きと轟音。かつて体験したことのない「蒸気機関の迫力」に
私は圧倒されてしまった。
「こ……これが汽車?」
「これは貨物車と言って、荷物を運ぶ乗り物ですよ」
「貨物車………」
「客車なら乗れたんですけどね」
「な、なんと素晴らしい」
私は思った。
人間がホウキに乗らないのは、こんなに素晴らしい乗り物があるからだと。
「今日は楽しかった」
「ええ、僕もです。また会える日を楽しみにしています」
「さらばだ」
「あの、お名前は」
「ロキだ」
「ロキさんはどこに住んで……」
ヒョイ ヒュウゥゥーン
「ホ、ホウキに乗って……なんて素晴らしいんだ」
〜そして現在〜
「私が初めてホウキに乗った日、ひとりで駅に行ってな。そこで会った少年と友達になった」
「ロキさん……それ私ですよ」
「は?」
「てっきり覚えていらっしゃるとばかり……」
「いいや、ちっとも」
「そんなあ」
「まあ、良いではないか。今ではこうして共に茶を飲む仲だ」
「(これまでの数年間は何だったんでしょう………)」
<コメント>
ポップンNCP祭り様に送った物です。
普段のロキは海原○山みたいな喋り方なのに、
幼少期だとガ○シュみたいになってしまいました。
ちなみに、これは差し替えです。(05/7/2)
前の作品は色々とヤバイかなあって思ったので。