俺の一日in after school.
俺は歩いていた。廊下を。その先にある苦痛に向けて。向かう場所は多目的室。
「あぁーあ。メンドくせぇー・・・」
俺はぼやきつつも目的の場所――多目的室――に向かう。だが、
「あぁ?呼んどきながらそれかよ!?」
俺が見たもの。それは、無常にも鍵の掛かった薄暗い多目的室だった。
「はぁーあ。そりゃねぇぜ・・・」
そう言いつつ俺は荷物をそこら辺に置いてなんとなく足の向くままに、格技室を開いた。
キイィィ。扉が油をさしてくれと言う悲鳴が聞こえる。そして扉が開いた。
「・・・・・・・・」
俺はどーせ開かないだろうと思い開けたらなんと開いてしまったのである。しかも先客がいた。テアルだった。
「何ヤッテんの?」
「部活」
その後、それだけでは足りないと思ったのか少し間を置いて付け加えた。
「掃除」
「んあぁ・・・そーか・・・」
はっきり言って俺はテアルの事を知らない。一応同じクラスなのだが、話したことも無ければ、話しているのを見たことが無い。いつも同じ場所でPCを触っている。ちなみに俺の学校は、なんと超有名校を気取っていて、授業はPCで全て行えるようになっていて、漢字とか、筆記問題などPCでは出来ないモノはディスプレイを倒して行うことが出来る。ちなみに話はそれていくばかりだが、机に付いてくるのはハードディスク、ディスプレイ、CDなどだがマウスやキーボードは付いてこないのである。
そこら辺の周辺機器は、個人の好みが入って、普通のは学校が格安で売っているが、ほとんど誰も使わない。逆に使っているヤツは変人扱いされるのが落ちである。それを使っているのがテアルである。俺のクラスにはコイツしか学校が売ってんのを使っていないと思った。俺もなんだ?アイツ・・・見たいに思っていた。
その時までは。
そういえば、俺はテアルの部活を知らない・・・聞いてみるか?あんま聞きたくないなぁ・・・なんて思いつつ遠慮しつつ尋ねてみる。
「なぁ・・・」
「? なに」
そっけない答えが返ってくる。
「文芸部」
そこまで考えて・・・
「って、何でお前。じゃあこんなトコの掃除してんだ?」
そうなのである。部活っていったって、部室があってそこでやっているはずである。気になったので聴いてみる。
「部活なのになんで、こんなトコで掃除なんかしてんだ?」
引き金になることを言ってしまった事も知らずに。
「考え中」
「はぁ?」
そういいながら、俺は初めてコイツの声を聞いたなぁなんて思っていた。さっきまでは、結構緊張してたりなんかしてて、そこまで考えが至らなかったのだ。それ以前に、コイツが話したトコはじめてみたなんて思っていた。
「構成」
「構成?・・・あぁ。文章構成か」
「そう」
そう言って、また掃除をしだした。そこで俺は、ダッシュで格技室の入り口まで行ってドアを開けて、顔をそこから覗かす。まだ、誰も来ていない。もう、呼び出しの指定の時間からから10分以上たっているのに・・・――まぁいい。そう思い直して俺は、テアルに言う。
「ソージ手伝ってやるよ。どうせ暇だし」
そういうとテアルは、手を止めて十秒ぐらい俺の顔をまじまじと見る。
なんだ?と俺が思っていたら、すっと手を上げてある一点を指した。
そこは、掃除用具入れだった。
「?」
一瞬考えてから分かった。つまりは手伝ってくれという意思表示だろう。そこで俺は掃除用具入れから、モップを出してから掃除を俺ははじめた。適当にそこら辺から拭き始める。だがこれが、結構疲れるの何の。考えると言うことには不向きなんじゃないか。と思い出してから少したった頃だった。
世界が変わり始めた。
「・・・・・・」
テアルが黙りこんだせいも在り俺は――いや。俺も――黙り込んでいた。まぁ、十分ぐらい掃除をしてると、手とかもタルくなって、考えを巡らすという行為が簡単に出来るようになっていた。そこへ・・・・
ダーン!! 凄い音で格技室の扉が開いた。
「おわぁ!?なんだ?だっ誰??」
「・・・・・?」
あの無口なテアルでさえも表情をミリ単位で変えて、扉を注視している。
「おーい!!! アイツどこ行きやがった!」
そう言って、入ってきたのは俺の担任――まぁテアルの担任でもあるのだが――だった。
「どうしたんです?」
取り敢えず声をかけてみる俺。だがそれが間違いだった。
「あぁ!オメェ。いないと思ったらこんなトコで油売ってやがったのか!」
ゲッ!マジかよ・・・・まぁ、本当なら呼び出し食らってたから良いんだけどね。一時間位遅れて怒られるってのも・・・・そんな事を考えてから、先生の言葉は以外にも、叱責ではなかった。
「こんなトコにいたのか!探したんだぞ!」
「・・・・先生がこんなトコに呼び出したんじゃないですか」
正確に言うとココ――格技室の前だったんだけどね。
「ありゃ・・・?そうだったか?」
そう言って照れ隠しか、心無し早口で先生は続ける。
「まぁ、過去のことは置いといて・・・・・・」
おいおいおい・・・・無理矢理流したよ。まぁ良いけど。
「今日呼び出しのはちょっと頼みがあるからだ」
「頼みぃ?」
そんなコトの為にサッカー練習を潰されたのか!って言う言外の思いが伝わったのか、先生は慌てて弁外しだした。
「まっ、まぁ私的な頼みでの為に生徒の放課後を潰すのはどうかと思ったけど、突っ込まれない考えたら呼び出しぐらいしかなくてさぁ」
ついにタメ口になったし・・・・ってか、私的な頼み!?俺相談所開設したおぼえねぇぞ・・・?
「んで、先生。何で俺なんです?」
あぁ、最近ちょっとヤバいのが出回っててな。それを見つけて発信源を潰して欲しいんだ」
全く意味不明・・・先生は解ってるからいいが、全く知らないヤツが聞いたら単なる文字の羅列にしか聴こえない。
「はっ?」
あっ。ヤバ。ついつい俺もタメ口になっちまった。だけど先生は、明らかに戸惑っていてそんな些細なことには気づかず、今度はまぁまぁ解り易く説明してくれた。
「いやぁね、来週からテストがあるだろ?」
「あぁ!期末ですか?」
「そうだ。それで、だ」
そんな先生の話を遮るヤツがいた。
すこし先生に同情。かわいそ。良い所だったのに。
「邪魔です・・・・・」
先生の話を遮ったやつはテアルだった。まぁ、掃除の邪魔してたのは俺らだし。しょうがないんじゃないかな・・・・?
ていうか、テアルのヤツ先生の前だと偉くテンションさがんのな。新たな発見だ・・・。ってか、俺こんな事見つけて何やってんだか・・・・・
「んで、だ」
あっ、仕切りなおした。
「それの答えが誤って流出している。って噂が出回ってんだよ。まぁ、一応念のために捜して、当たりだったら消しといてくれ」
「・・・・あの」
「なんだ?」
「それと俺どう関係あんですか?」
言っちゃ悪いが、結構パソコンは点でダメとまでは行かないがそんなに、無い。その俺にどうしろと?それを先生に言ったら、「まぁ、頑張ってくれや。上手くいったら一単位か何かやるから」って・・・・単位は嬉しいけど、こんな面倒なことやらなくても一単位くらいなら頑張れば出来んじゃないかな・・・。まぁ、いい。やるだけやってみますか。
「先生貸しにしときますよ」
そう言ったら先生は、えらく喜んでいった。
「なるたけ秘密にしといてくれよ。頼んだぞ」
「えぇっ!?俺一人でこれやるんですか?それはちょっと、無理ですって・・・」
「んー。じゃぁそうだな・・・」
そう言って考え込む先生。
そこへ―――
「・・・・邪魔です。どいてください・・・・」
またテアルだった。って、こいつ俺らが話しこんでる間、ずっと掃除してたのか・・・?」
まぁ、良いけどさ・・・・・・
「んあぁ、わりぃ」
そう言って考え込む先生を移動させようとした時だった。
パン!
わっ!びびったぁ。先生がいきなり手を叩いた。ったく。なんなんだよ。もう。そして先生は自身満々に言った。
「そーだ。テアルを付ける。これで、良いだろ」
そう言われても・・・ってか、本人の意思は無視か・・・・・?だが、お構い無しに先生は先を話す。
「期限は来週のテストが始まる前だから。それじゃぁよろしくねぇー」
そう言って格技室から出ようとする先生。だが俺はまだ聞きたいことがあった。
「「ったく、まぁいいか・・・・なんで俺なんですか?」
まぁ、最初のは聞こえないことにしといてくれ。だが、先生は笑いながら格技室から出て行った。おいおいおい・・・・
「テアルー。聞いてた?」
「聞いてた」
何かつれない返事が返ってきそう。
「手伝ってくれない?」
「イヤ」
うぐっ。・・・ダメか。そう思ったとき。
「・・・・・メロンパン・・・・・」
「・・・・・・っは?」
「奢ってくれるなら良い」
こいつ、メロンパン好きか・・・?
「ホントか?」
「ホント」
「あぁ、じゃぁいいぜ。奢ってやるよ」
「わかった。じゃぁやる」
かなりあっさり、引き受けてくれたな。メロンパン効果か?何でもいいか。んー?待て待て・・・そう言えば今日俺サッカーの練習じゃないか。
そう思って時計を見てみると今五時半。
行っても何も出来ない。はぁ・・・しょうがないか。あんましたくないけどサボっちまうか・・・明日からテスト一週間だから部活ないし・・・そうと決まれば話は早い。
「テアルー。たりぃさっさとやっちまおうぜ?」
「ダメ・・・」
「・・・何で?」
「掃除終わってない」
「・・・・・・・・・」
俺が黙り込んでしまうと、テアルは掃除を再開した。・・・・・まっ、確かに途中で放り出すのはマズイか。
「よしっ!ちゃっちゃとやっちまおうぜ・・・・」
「ん。分かった」
そして、狂ったように掃除を開始した。
・・・・・・・・・・・・・・・・30分後
「ふぁ・・・やっと終わった」
なんと30分で校庭と同じくらいの面積をモップがけし、さらに丁寧に雑巾をかけて、ワックスまでかけたのである。その後ワックスまでかけたのだった。