(230) そして革命へ◆◆森山直太朗--新たな香辛料を求めて◆◆ |
投稿者:nabes
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やはり、カエルの子はカエルということなのだろう けど、それにしても凄すぎる。『さくら(独唱)』 の国民的ヒットなど、どこ吹く風のK点越え。森山 直太朗のニューアルバム『新たな香辛料を求めて』 はとてつもなく素晴らしい作品に仕上がっている。
『さくら』を収録してある『乾いた唄は魚の餌にち ょうどいい』の際に書いた通り、この人はロックで もなく、ポップでもなく、もちろんフォークでもな く、ゴスペルとして、自分の歌を昇華させている。 確か、こうも書いた。終わりから始まりへの矢印を 示した壮大なクライマックス・ミュージックとも。 そして、今作では更にそのクライマックスは、ただ のオーバー・チュアーだったという新事実を浮き彫 りにしている。つまり、新たなクライマックスを見 事に産み出しているのである。これって、かなり凄 いことだと思うし、森山良子の御子息という七光り だけでは、こうはいかないと思う。
しかし、見事な日本語センスである。タイトルが抜 群なんである。インストのナンバーである『革命前 夜、ブラックジャックに興じる勇者たち』なんて、 なんのことやらわからないってもんである。このタ イトルを見て思い出したのは、ミッシェル・ガン・ エレファントの『世界の終わり』の「世界の終わり を君は待っている/紅茶飲みながら/待ち焦がれて いる」という一節。死と生の隣り合わせをこんなに 美しい日本語で粋に書き連ねたものはないと思って いたが、このタイトルにもそれを感じることができ る。革命〜といっても、それは失敗に終わるかもし れない。その結末は神のみぞ知るものだが、ワクワ クしながら、静かに時を数える。時に紅茶を飲みな がら、時にブラックジャックに興じながら。しかも ここまで大層なタイトルつけながら、インストって いうのも粋である。(正確にはインストというか、 ポエトリー・リーディングなんであるが)
しかし、やはり特筆すべきは『生きとし生ける物へ』 に尽きるわけで。何だろう、いい歌とか、そんなレ ベルをも越えて異常である。この人の脳みそ。フォ ークで始まり、拳を回し、そして壮大なサビに移り、 グワーッと高揚の中、終わるのかと思いきや、まさ かのオチである「もはや、僕は人間じゃない」とい う不条理でディープな世界観。きっと、これを聴い て「やられた〜」と思った歌い手さんはいっぱいい たことだろう。(たとえば、草野マサムネや宮本浩 次とかね)語弊を恐れずにいえば、手塚治虫の後継 者は、実は彼なのではないだろうかとも思う。
しかし、ここまでの大作を作って、なおこの人は、 まだ底が見えていないように思える。だとしたら、 さきほどの『革命前夜〜』は自分の事を言っている のかもしれない。彼の世界観が全開となったとき、 革命は成就して、彼は誰も見たことのない鳳凰の輝 きを見せるだろう。その時、人はどのようなリアク ションで彼を迎えるのだろう。そんなワクワク感で 今は一杯である。
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2004年07月11日 (日) 19時45分 |
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