(226) 漆黒の闇を描け◆◆YOSHII LOVINSON--AT THE BLACK HOLE◆◆ |
投稿者:nabes
MAIL
URL
|
いや〜、世の中は黄金週間に入ったようですね。 去年のようなSARSなどの厳戒体制もなく、今年は 海外に休暇を求める人も多いようですね。よく考 えてみたらこの『GRAD ALL OVER』読者の中にも、 きっとそんな方もいるのでしょう。今日は幸い好 天、まさに行楽日和ってやつですね…とまぁ、言 っていますが僕の仕事場は、そんな黄金週間もど こ吹く風、仕事でございます。まぁ、人と一緒の 時期にどこかに出かけてみても、つまらないでし ょうから、それはそれでよしとしているのですが、 こんなにいいお天気だと何ともいえないものも感 じるわけで。仕方が無いから音楽でも聴くとしま しょう。久しぶりだな、ちゃんと音楽を聴くの。 後ろでは彼女がゲームに興じているので、そのス キに…ということで、久しぶりの雑文と相成りま した。この好天に恵まれた黄金週間に御予定のな い方は、ほんの少しの時間でございますが、おつ きあい下さいませ。
とはいっても、再三書いているかもしれませんが、 何も音楽から遠ざかっているわけではありません。 何だろう、仕事としての音楽はよく聴いているの ですが、ことプライベートに関するとからっきし なわけで。これは自分でもいけないなと思う一方 です。やはり、その音楽の知識が止まってしまう というのは、例えばファッションでいうならば、 去年の流行りの格好で街を闊歩している「自称オ シャレさん」なだけであって。気がついたら裸の 王様になっている可能性さえ否めないと思うわけ です。だからなるべく自分がピンと来た新譜(ア ルバム)に関しては買うようにはしてます。その 中でやっと、こういう機会をもって聴くこととな ったCD、それが今回のYOSHII LOVINSON待望の復 帰作『AT THE BLACK HOLE』というわけです。
「ブラック・ホールにて」ですよ。色々買ってあ る中で、なんでこのアルバムを選んだのかなと考 えるにつけ、「今の僕の心情なのかな」と考えて しまいます。抜け出すことのできない闇から吉井 和哉を何を叫ぶのか、僕は耳をすますことにしま した。
曲調は、ダークなものも多いけれど、突き抜けて いるなあという印象。ソロの先輩、奥田民生に近 いのかなぁ、ユニコーン後期に見られた民生色が 全面に見られた曲作り、イエモンの後期もそれは 感じたわけですが、やはり形は変われど、この人 こそ、「ザ・イエロー・モンキー」という感じの 良くも悪くも変わってない姿が安心感を生んでい ます。ただし歌詞は見事なまでに混沌としていて、 陰鬱で、メランコリックに仕上がっています。人 間の情けなさとか悲しいまでの性とか、憂いを感 じさせて何かを考えざるを得ないとこまで、追い 込まれそうです。
うーん、この追い込まれるという感じこそが、吉 井和哉の沈黙の境地なのかもしれませんね。活動 休止から2年、その間にはミュージシャンとして 見すごせない「9・11」だったり、考える時間 はあったのでしょうけど、その中で彼の中にそん じょそこらの復帰作を創り出せない、でも発表し なくてはいけない葛藤があったのかもしれません。 考えれば考える程、創りだせない快心の作品、そ して無情に過ぎ去る時間、気がつけば彼自身に少 なからず「ブラック・ホールの中」に入り込んで しまったような錯角を覚えてしまったのでしょう。
ただ、彼の凄いところは、そんな暗闇さえも描く ことのできる自在な精神にあるのでしょう。そこ からもがいて、光の射す方へ向かうのではなく、 あくまでその中で見えるものを描く。それって、 ある意味イエモンのバンド人生そのものだったよ うな気がします。そうなると、もう恐いものなし でしょう。そのようなことはバンド時代に嫌とい う程、経験しているわけですから。そして、そこ に周りのメンバーの事を気づかわなくてもいいと いうのであれば、もう単純に匠の境地へと辿り着 くのも容易いといえるのでしょう。
話は唐突に飛びますが、漆器の職人は漆黒の闇か ら鮮やかな色、輝きを作り出し、それを世にだし ていきます。吉井和哉もまるで漆器の職人のよう に漆黒の闇からキラキラしたもの、ギラギラした もの、グルングルンしたものを作り出していくの でしょう。これからも彼には唯一無二の匠業を期 待したいと思います。
|
|
2004年04月29日 (木) 08時28分 |
|