(176) 彼女が庭に帰る時◆◆MISIA--KISS IN THE SKY -NON STOP MIX-◆◆ |
投稿者:nabes
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この週末は風邪をひいてしまった。熱もあり、折角の 日曜日だというのに家で唸りながら寝ていた。 ようやく夜遅く起きて、このメルマガの準備でもしよ うかと思ったが、音楽を聴くのも億劫なほど、体調が 悪い。こういう時は聴こえるか聴こえないかくらいの 小さな音で聴くのが、非常によろしい。割と硬い感じ のビートとかだと、小さな音でもよく、聴こえる。そ して結構メジャーどころとか聴くと、スンナリと耳に 入ってくるので、これもまたよろしい。今宵はMISIA のリミックス・シリーズの最新作『KISS IN THE SKY -NON STOP MIX-』でも聴いて、落ち着いた風情で聴 くとでもしようではないか。
MISIAのオリジナル・アルバムは買わない時もあるが、 このリミックス・シリーズは毎年購入している。理由 は簡単、外れが無いからである。彼女はシングルの時 点で割とC/Wにリミックスを多用するのだが、原曲を 損なわないイメージでアレンジに重点をおいた、非常 に日本人向けの良質なリミックスが施されていて、好 感が持てる。ということで、CD屋でこのCDを見つけた ときには、今年もこのシリーズが出たのかぁという、 多大な期待と共にすぐさま購入した。 ちなみに、これの前にリリースされた『KISS IN THE SKY』の方は今回は、未だ買っていない。特に理由は ないのだが、その勘はおそらくギターにB'zの松本と かを起用して、若干の実験精神にチャレンジしている のが僕のピンとこなかった理由かもしれない。そのま までいいじゃん、MISIA。そんな微妙な焦りが見えた ように見受けられた、あくまで僕の中ではね。
日本のミュージック・シーンというのは、絶えず、新 星と呼ばれる存在がデビューしていく。もちろん、中 には消えていく存在もあれど、残っていくものは本物 として認められ、また次の新星を迎え撃つ存在として、 光を放っていく。そんなシーンの繰り返しである。そ んな中、どちかというとMISIAというのは、日本の本 格的なR&BのDIVAという存在のオリジネーターとして、 数々の猛者を迎えてきた。やはり、チャートの中に新 しい存在が生まれる時、人はその新星の存在に釘付け になる。「こいつは、今までの歌と何が違うのか?」 そんな興味本位の観点から、その瞬間に旬となり得る。 それはそれで喜ばしいのだが、僕はその度、迎え撃つ 側の方に焦点を合わせてしまう。「こんな新しいアテ ィチュードを持った新星に、この道を創ってきたオリ ジネーターは何を返して行くか?」MISIAはその都度、 新しいうねりと闘っていき、その結果R&Bという範疇 を超えるエンターテイナーとしての地位を確立してい った。
そう、MISIAは既にR&Bというカテゴリから、逸脱した 日本の新しいポップスを作り出していった。彼女の大 掛かりなコンサートツアーとかは、ユーミンに代わる 一大ショーだし、その大仕掛けに負けない歌声なり、 表現力こそ彼女が数々の猛者を迎え撃った証なわけで、 彼女の次の仕掛けこそ、また新しい道を作り出す。そ の一歩となっている感がある。 そんなモンスター・ミュージシャンMISIAが、ふと生 まれ育ったR&Bの庭に帰る瞬間、それがこのリミック ス・シリーズのように思える。各DJの織り成す様々な リミックスをノン・ストップに仕上げているので、脈 絡が無さそうだが、実は大きな幹がこのCDにはある。 自由であるということ。テーマが一貫してない分、色 々な形でMISIAを調理、その結果クラブやバーなどで 平気でかけられる上質なリズムが心地よく聴こえるの だ。もちろん、それは家で聴くのにも適していて、耳 に軽く入るBGMとしても成立させることができる。
自由なスタイルが彼女をR&Bの庭に帰すというのは、 何か矛盾しているようにも聞こえるが、彼女がR&Bを 超えた存在になっている今、実験することがポップス であり、自由に泳がせることこそ、彼女にとっては最 適のリラックスになり得ているのだから、音楽という のは難しい。そんな自由に泳いでいる様を聴いてるの だから、そりゃ気持ちもよくなる訳だ。このバランス 感覚を保っている間はMISIAはどんな挑戦も受けてた てる。MISIAが日本のミュージック・シーンの最高峰 にいる一因が少しだけわかった気がする、そんなシリ ーズとして、長く続けてほしい好盤なのであった。
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2003年05月26日 (月) 08時08分 |
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