(153) リップ再検証◆◆RIP SLYME--RIP SLYME ORCHESTRA+PLUS◆◆ |
投稿者:nabes
MAIL
URL
|
久しぶりにCDを買いに行った。というのも、椎 名林檎の新譜を未だ購入してなかったから。発 売日にいつもきキッチリ買う僕だが、今回は金 銭的な理由と自分のスケジュール的な理由で、 購入をしていなかった。まだ、初回特典盤だっ たようで、特には気にしてなかったのだが、そ れはそれで嬉しい。さて、目的は達成したもの のこれだけでは飽き足りないのが僕の性である。 少し時間もあるので、他のCDも物色してみよう。 心が揺らいだのは、グラミーを独占したノラ・ ジョーンズだが、これはまたの機会に譲ろう。 そう思っていると、リップの新譜に出くわした ので、「あ、そういえば出てたんだ」という軽 いノリで買う事にした。
正確にいえば新譜という表現は適切では無い。 何故ならリップ自身は参加していないから。つ まり、どういうことかというと、彼らの曲をク ラシック調にアレンジ、そしてラップを各界の 著名人が朗読というスタイルを取られた2枚組、 それが『RIP SLYME ORCHESTRA+PLUS』である。 これはまごう事無き、珍盤・奇盤の類である。 さて、どういうニーズのもとこのCDは企画され たのか?確かに試みは感嘆すべき面白いもので あるが、ファン待望!でもないだろう。リミッ クス盤ならライムスターの『ウワサの伴奏』の ように、コラボレートの形をとった方が売れる と思うし、レコード会社自体もそれを希望した んじゃないのだろうか?がしかしである。リッ プを好きな人にはそんな解せない気持ちよりも 先に、「「いかにもリップらしいなあ」という ムフフ感に溢れている。このムフフ感こそ、こ のCDの肝といってよい。
あくまでポエトリー・サイド、つまり朗読のCD の方に目を向けようと思うが、人選もサブカル チャーとメインストリームの枠など知ったこっ ちゃない、これまたムフフでセンスのあるメン ツを揃えてきた。田口トモロヲ、伊武雅刀、永 瀬正敏の個性的な怪優と呼んでいい俳優陣、梨 園からは中村獅童(最近、この人好きなんです) 、声優界からは大御所・千葉繁(ねずみ男の声 などで有名)、「ウルルン」のナレーターを務 める下条アトム、永作博美も凛としながらも癒 しのある感じで奮闘している。ダンカンなんか はクレジットを見ないと、誰だかわからなかっ た。 でも、今回の僕的なMVPは『楽園ベイベー』を いつものように大袈裟に、それでいてニヒルに かましているクリス・ペプラーに決定!ある意 味、これを見て好奇心に火がついたといってよ いが、聴いてみてその予想に見事に応えてくれ た。
しかし、こうやって朗読を聴きながら歌詞カー ドを読んでいると、たかがラップといえど、ち ゃんと意味のある文章として成立しているんだ なということを確認することができる。勿論、 韻を踏んだりコール&レスポンスの歌詞も入る が、リップの歌自体が意味を為した物語だとい うことに気付かされる。リップ・スライムが去 年グーっと売れたのは、どこにでもあるヒップ ホップと一線を画したこの物語性、メルヘンチ ックなところにあるのかもしれない。そう考え ると、この物語をキッチリ感情を入れつつ、ラ イムし続けるリップというグループはやはり、 並のグループではない。
僕も含めてそうだが、カラオケなんかでリップ の歌を歌う時になかなか上手く歌えないのは、 もしかしたらこの物語性に気付かず、ただライ ムしてるだけだからなのかもしれない。ならば 今度からはそうしてみよう。この珍盤のポエト リー・リーディングのように、そこにある物語 の意味を理解し、感情を入れて音読を奏でるこ と。もしかしたらこの盤の一番伝えたかったこ とって、そういうリスナーへのリップ流のマニ ュアルなのかもしれない。メルヘン部分から通 すリップのラップ・再検証、そう考えると、た だの珍盤・奇盤に終わらせない何かを、このCD は持っているわけで、つくづくやる事が絶賛級 に値してムフフが止まらない、それもまた現在 のリップの勢いに他ならない。今年も色々やら かしてくれそうである。
|
|
2003年03月05日 (水) 15時07分 |
|