嫌な時があった時は、ロックンロールに限る。
絶対にだ。考えるとしばし、ロックンロール
から離れていたような気がする。ある程度、
満ち足りていたからだったのだろうか？まぁ、
そんな事はいま考えても仕方がない事である。
何故なら、現に嫌な時があったからであろう。

すごい、傲慢な考え方に聞こえるかもしれな
いが、少し前に、「自分にとって一番、腹が
たつことは何であろう？」ということを考え
た。色々考えて出た結論：自分の思い通りに、
事が進まない時。これに尽きるような気がす
る。
例えば、結構急いでいて、電車の乗り換えな
んかで珍しく走っちゃったりなんかして、階
段なんかも２段飛ばしで昇って「間に合うか
？」と思ったら人身事故とかで電車が遅れて
いるような、まぁいうたら不可抗力。例えば、
そろそろ暑くなってきたので、お気に入りに
Tシャツなんか出して、今日はこれを来て行こ
うなんて思ったら雨と風が入り交じっててと
ても寒いので、仕方なく上着を羽織ってしま
う、不可抗力の中でも特に致し方ない自然の
摂理。たとえばちょっとした買い出しに出か
け重い思いして帰ってきたら、「あ、これも
ない。あれもない」でまた何度も往復してし
まう、これは自分の責任。がしかし、たまに
異様に腹がたつときってあるよね？
とにかく、人は無意識にそんな事を、目にし
たり、聞いたり、実際したりすると結局腹の
たつわがままな動物なのである。

話が大幅に逸れたが、ロックンロールはそん
な時に聴くと、自分にとってはスッキリする。
うむ、なるべく大きなスピーカーがいいだろ
う。そしてなるべく大きな音がいいだろう。
でも、自分だけが住んでいる社会ではないの
で、迷惑にならない程度がベターだ。そんな
小市民的な事を、と嘆くのならヘッドホンを
かければいい。妥協は自分からしていけば、
前述の思い通りに事が進まない、というわけ
でもないので良しとしよう。

先日、やっとJON SPENCER BLUES EXPLOSION
（以下JSBX）の『PLASTIC FANG』を買った。
なにげに今年リリースされた洋楽のCDを買う
のは久しぶりで、まだ４枚しか買っていない
事がわかった。（ちなみに他の３枚はケミカ
ル、エミネム、プリンス）そして買ったはい
いが、この作品の封をあけるまでには時間が
かかった。たまにそういった類のCDがある。
そういうのはそういうタイミングがある。お
そらく２週間近く聴かなかったが、それはそ
れでいいのである。

音は前作『acme』から比べると極めて真っ当
なロックンロール、ていうかパンクだよな？
この感じ。とにかく吠える吠える。バンド名
のブルース・エクスプロージョンなど、まる
で無視である。でも後半になると、その感じ
を残しつつ、デビュー時のストーンズっぽい
リフも飛び出し、バンド名に相応しい音にな
っていく。でもそんな講釈は、この際どうで
もいい。何せ今の僕は、嫌な事があったのだ。
わがままに、そして貪欲にロックンロールを
感じよう。

『acme』では、違う畑からの敏腕プロデュー
サーを招き、いつもとは違った角度からのロ
ックの探究に入った。僕は新作が出る度に、
「今回は最高傑作！前回の闇から飛び出た！
！」みたいな前言撤回はしたくないので『ac
me』の是非は問いたくない。もちろん、好き
だ。でも、jon spencer自身はどうだったんだ
ろう。イマイチ、自分の思い通りではなかっ
たのかもしれない。そりゃ腹もたつよな、だ
から今作に至るまで３人ともソロ活動に入っ
た。ソロ・バンドで発散させたもの、人脈を
いかし地下活動に走るもの。そしてjonは色
々なブルースミュージシャンのアルバムにゲ
スト参加し、よりブルースを求めた。

やはり、そういった過程を経たアルバムには
肩の凝りがすっかりほぐれていて、最高の三
位一体に変化している。だから「パンク？」
「ブルース？」とかはどうでもいい。この３
人がやったら全てがロックンロールなんであ
る。出来上がった今作は、肩の凝りをほぐし
たら前以上の超合金の筋肉を手に入れてしま
ったようなものである。しかもその超合金は、
筋肉以上にしなやかで自由の利く無敵の筋肉
と変化した。そんな思い通りのロックンロー
ルを聴いたら、あっという間に元気になれる。
やっぱり人間ってわがままな動物なんである。