しばらく体調を悪くしていた。本気で体が
だるい。咳、鼻水は止まらず、頭がボーッ
と違う方向に電波を飛ばすような倦怠感、
仕事を休もうかとも思ったのだが、体のど
こかがまるっきり動かない訳ではないし、
この仕事も4年続けていると、こういったと
きの仕事の仕方も、何となく体が覚えてい
る訳なので仕事には出続けた。

それでも今回はそれが何とも悪循環に体を
蝕んでいる印象があり、一向に良くなる気
配がない。そうなると気分転換しかない。
ここで、愛すべきCD達の出番だ。こんな時
は変にガツガツのロックで勢いを付けても
シンドイだけだから、だる〜い感じのがい
いだろう。頭が正常に動かない、まるで月
曜日のような気だるい音楽。CLOUDBERRY J
AMが、こんなときはいいだろう、いいに決
まってる。

御存知のない人の為に軽く説明すると、音
楽のジャンルでいうところのスエディッシ
ュ・ポップというやつだ。そう、カーディ
ガンズに代表されるアレだ。日本ではカジ
くんや原田知代なんかがやっていた感じの、
清涼感があって、必要以上に重くないタッ
チの音楽だ。一時、凄く凝っていた時期が
ある。北欧はスエーデンという、きっと一
生行く事のないであろう自分にとっての偏
狭の地への単純な興味、そしてスカスカな
軽い感じが、その時の自分にピタッとはま
ったのか、色んなバンドのCDを買った、そ
の中で一番、好きだったのがCLOUDBERRY J
AMだった。

軽やかな木琴（鉄琴？）の音からスタート
するアルバム。何といっても、このバンド
はヴォーカルのジェニー嬢の声に尽きる。
何となく「嬢」とつけたのは、そういう気
品に溢れた感じの女の子だからだ。友人は、
この声を一聴して「カーペンターズ？」と
聞き返したが、なるほど確かにカレン・カ
ーペンターっぽい感じの低音に特徴のある
声をしている。

さて、今回の本題はこのジェニー嬢である。
端的にいわせてもらうと、この娘に会いた
い。というのも、このバンド自体は97年３
rdアルバム発売後、突然解散してしまった。
理由はジェニー嬢で、当時大学生だった彼
女はバンド活動よりも、学業を優先したい
との理由をもって、自ら終止符を打った。
惜しい。確かに沢山の大衆に聴かれるよう
な音楽ではなかったかもしれないが、この
バンドの音は、とっても良質だった。どん
より曇った空に、一瞬差した晴れ間。居心
地の悪い場所を出た後の胸一杯の深呼吸。
その大部分をジェニー嬢が担っていた。ど
ちらかというと童顔な顔だちとは裏腹に出
される気品ある低い声。そして、アルバム
を追う毎に、彼女の顔は綺麗になっていっ
た。ある意味、それを見るのも楽しみでこ
のバンドは好きだったので、解散したとい
うことを聞いて胸がきゅーっと苦しくなっ
た。バンドの解散で切なくなったのは、も
しかしたら初めてだったかもしれない。
（ブルーハーツの時はあまりにも突然なた
め、呆気にとられたというのが本音）

初恋の郷愁、そんな言葉が浮かぶ。見てる
だけで満足、あとあと考えると、何がそん
なに惹かれる要因となったのかイマイチつ
かめない淡い記憶。でも、そんな彼女の記
憶はこのバンドのアルバムを聴くとハッキ
リみえてくる。今頃、彼女は大学も卒業し、
何らかの仕事をしているだろう。ちょっと
あの頃と雰囲気も変わって、それでいて更
に綺麗になっているかもしれない。妄想を
膨らませれば図書館の受付とかに就いてい
ると嬉しい。気だるい月曜日に透き通る風
のような気品のあるインテリ。CLOUDBERRY
JAMのジェニー嬢に、もう一度会いたい。