きっと解散してるよね、もう。でも、
出来ればもう一度観てみたいバンド。
色々うちのCDラックを見ていて、ふと
目に入った。SOUTHEN CULTURE ON THE
SKIDS。長いのでS.C.O.T.Sと略す。こ
のバンドの奔放っぷりを聴くにつけ、
「楽しい」ということはこういうこと
なんだな、という事を確認できる。

CDを集め始めた頃、色々音楽雑誌を情
報収集として買っていた。その中に、
カレッジ・チャートというコーナーが
あった。そこには向こうのインディ・
レーベルから出されているバンドが多
数ランクインされていて、捻くれ者の
僕は「ここに出ている無名のバンドを
押さえておくこと＝マニアへの近道！」
みたいな今思うと、何だかなぁと思っ
ちゃう理由でそのコーナーを結構読ん
でいた。見た事も、聴いた事もないバ
ンド。メンバーが何人いるのか？そも
そもどんなジャンルの音楽をやってい
るのか？そんな信じる物は自分の直感
のみ。という過酷な（自分で過酷にし
てるんじゃね〜かというツッコミもあ
りましょうが）条件のもと、パッと目
についたのが、このS.C.O.T.Sだった。

ジャンルを一言でいうとガレージって
いうんでしょうかねぇ。ロカビリー、
サーフ、パンク、そしてロックンロー
ル。この辺がごった煮されていてアメ
リカのテレビアニメの主題歌のような
ホンワカした感があります。男2女1の
3ピースバンドで、これがまたトホホな
ルックスなんですよ。（おそらく）メ
インヴォーカルのRICK MILLERはB級映
画の中に出てくるスタンドのお兄ちゃ
んというか、オッチャンみたいな風体
だし、（主に）ドラムのDAVE HARTMAN
に至っては中ジャケでピタTから浮き出
た腹を出し、下は白ブリーフ。ずり落
ちた眼鏡に見てるこっちまで脱力。な
らば、紅一点MARY HUFF（主にベース、
ピアノ等担当）に望みを繋ぎたいとこ
だが、どの写真を見ても全ヅラで映画
『マーズ・アタック！』に出て来そう
な感じ。まさに擬音に例えると「ホワ
ホワホワ〜〜ン」て感じだが、音が前
述のようにアニメのような和み溢れる
感じなので、まぁ納得してしまうとい
うか、バカ負けしてしまう。

とはいえ、バカ負けしてしまう位、徹
底できるって、結構羨ましいもんであ
る。この21世紀の世の中、馬鹿にさえ
なれない人が殆どであろう。勿論、こ
の僕も例外ではないだろうし、馬鹿に
なるのもリスクが要る時代だからだ。
でも、このお三方は分りやすく教えて
くれる。馬鹿になるなんて簡単だよ。
好きな事を徹底して楽しむ。その行為
を徹底して愛すること。そこには第三
者の介在はなし、自分達がその音を聴
いて、そのルックスを鏡で見てゲラゲ
ラ笑えること、それでいいじゃん。本
当にそれだけなんだよなぁ。

確か、今では伝説ともいえる嵐の中の
第１回フジロックフェスティバル。こ
いつらはオープニングを飾った。この
バンドを知ってる人など一握りもいな
かっただろう。日本におけるフェスの
歴史的瞬間、ベックやプロディジー、
レッチリなんかが同じステージに立つ
っていうお得度満点のステージの歴史
的一バンド目というある意味大役を彼
らは楽しさ満開という、こちらの期待
を増長させる役割を達成させた。それ
は彼らが楽しそうに馬鹿になっている
、その姿を見て「あぁ、こいつらみた
いに馬鹿になればもっと、楽しくなる
かも」っていう教本のようでもあった。
彼らを知っていた一握りの中の一人で
あった僕はこのフェスの成功をそこで
わかってしまった（長い目でみてフジ
ロックというフェスの未来という意味
でね）。

徹底した馬鹿になる、そんな彼らの奔
放な姿は、自分の楽しい事を楽しむと
いう現代的になかなか達成できにくい
テーマにおいて、僕の中では指針とも
いえる愛すべき姿といえよう。