(228) 「敬意」という名の木◆◆SOUL TREE〜A MUSICAL TRIBUTE TO TOSHINOBU KUBOTA--V.A◆◆ |
投稿者:nabes
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最近は再び、トリビュート・アルバムがブームの ようですね。しかも、自分が割とリアルタイムに 聴いていたものへのトリビュートが多くなってい るような気がする。やっぱり、これは僕の年代の 人間が、レコード会社などで、第一線でバリバリ やっていることのあらわれなのだろう。だとした ら、僕も年をとったものだ。
まぁ、しかし、そうやって良い音楽は若い層に受 け継がれていくかと思うと、こういったトリビュ ートのセレクトというのは、なかなかもって難し いものがあるのであろう。そんな中で、僕が特に 感心したのが、久保田利伸のトリビュート・アル バムである『SOUL TREE』である。
80年代後半から90年代にかけて、日本人に本 格的なファンク・ソウルの道を開拓したパイオニ ア。彼の歌にはバブル景気の真っただ中というこ とも相まって、少なからずゴージャスな匂いがす る。もちろん、ロックな人間からすると邪道以外 の何者でもなく、揶揄される対象でもあったこと も事実。しかし、トレンディ・ドラマなんかを見 て育った世代としては、まぁ一度は通る道といっ たところであろう。事実、僕も彼の歌はレンタル 屋なんかで必ずチェックしていたクチである。 そして、彼の存在がなければ、昨今の日本におけ るR&B全盛の世の中はあり得なかったかもしれな い。もちろん、それは歴史が後々、証明していく ことになるわけだから、彼の存在はJ-POPに確実 に一石を投じたといっても過言ではないだろう。
トリビュートしているメンツもそんな彼の足跡を 証明するかのような現在のキラ星揃いといっても よい。BOA、ゴスペラーズ、MISIA、中島美嘉、EX ILE、などなど。見事に久保田に関心を持ってい た層と現在のリスナー層をミックス・アップさせ たチョイスといえるだろう。 BOAは不朽のラブ・ソング『LA.LA.LA.LOVE SONG』 をSOUL'd OUTと組んで原曲の逆バージョンともい える軽快なフロウを聴かせてくれる。中島美嘉は 大ネタ中の大ネタという難しい役どころで、しっ かり自分の歌唱力を主張して、自分の歌として、 成立させている。これと相対するのはMISIAだろ うか。『indigo waltz』という割とコアな曲をチ ョイスすることで、久保田で育ったことを軽くア ピール、しかし、中島と一緒で圧倒的な歌唱力は 他の追随を許さない、まさに横綱級のバラードと いってよい。そんな中で、僕が「おっ」と思った のは、椎名純平WITH ダンス☆マンの『YOU'RE MI NE』の油ぎったファンクネスと最後にチョイスさ れた『TAWAWAヒットパレード』だろうか。この曲 が彼の中でも好きだったことを一気に思い出させ てくれた。アルバムの中の曲なんだけどね。
しかし、トータルして思うのは、みんなそれぞれ の解釈ながら、根っこの部分でちゃんと繋がって いるということ。SOULという久保田が日本に伝来 した芯の部分を見事に成熟させて、花や葉を付け て彩りを与えてくれている。「日本人がやるソウ ル、ファンクなど本物にはなり得ない」という彼 が闘ってきた誹謗に対する答えがこれである。 やっぱり、久保田利伸は勝ったのである。信じて 根っこを張り巡らせ、雨や風が吹こうと、支え続 け、そして大輪の花を咲かせ、木々の間には鳥が 巣を作り、人々は木々の下で一息つく。作られた 久保田自身、感慨無量のアルバムのような気がす る。そして、そんな思いが、リスナーにもビンビ ン伝わってくるまさに「敬意」という名にふさわ しい、大きな木の完成に拍手を送りたい。
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2004年06月24日 (木) 15時09分 |
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