『ポップスの新基準』なんて大層に書かれていると
何だか恐縮してしまう。AQUAのCD『AQUARIUS』を借
りてみて、帯を読んでまずそう思った。しかし、考
えてみると、自信の表れといってもよい。しかし、
ポップスというのはロックよりも定義することが難
しいジャンルだと思う。それはミスチル桜井も語っ
ていたように遥かにポップスの方が難しい、これは
誠に真である。それでも、このAQUAというグループ
は「ポップス」にこだわった。ならば、その自信の
程を聴いて判断してみるとしよう。

前からツタヤで目には止まっていたのだが、手に取
るまではいかないCD、それがAQUAだったかも。奇抜
なルックスでツタヤのような量産レンタルCD屋にお
いて、「あ」の段の最初に飛び込んでくるCD、それ
がAQUAの第一印象である。そして、そこで僕の知識
は止まっている。ゆえに、「生茶」だかなんだかの
CMでのタイアップに使われていたなど、知る由もな
かった。ただ、夏辺りから、自分の周辺でやたらと、
AQUAが好きというのを耳にして、ならば、今このタ
イミングなのかも…という考えで借りてみることに
した。

ハッキリいおう。僕は、このグループ好きになりま
した。なるほど、ポップスの新基準ということを自
分で定義は出来ないけど、結構、風穴は開けてるん
じゃないかな？そんな印象を受けたかな。一言でい
えば、ドリーミー。夢の中を行き来しているような
そんな感覚に陥いった。
時には、日常の中を、そして時には地球全体、大自
然を見渡すような開放感、更に時には、宇宙へと解
き放たれる浮遊感。それらが、クラブ・ビートに乗
って、かなりいい気分になっていく。そこにまるで
お人形さんのような女性ヴォーカル、そして男性ヴ
ォーカルのクセのある声、これらが完全に非日常を
提示している。

なるほど、非日常、これがポップスを表す一つのキ
ーワードになっているような気がする。例えば比べ
るとロックというジャンルは、きわめて日常の中に
存在しているからこそ、人の心にダイレクトに入り
込んでくる。そして、そこにはコール＆レスポンス
の世界が成り立つが、ポップスって、それが成立し
にくい。なので人は偶像としてのポップスよりも、
等身大のロックに傾倒していく向きがあるわけで、
アンチ・ポップスという人の多くは、現実的に物事
を見れる人なのかもしれない。でも、どうだろう。
世の中に溢れる世知辛い事件や誰かがカテゴライズ
した正義と悪のイザコザ。そこだけ見ていると、た
まに辟易したりするでしょ？そこにAQUAの夢見るポ
ップスを１曲でいい、ほら少しだけ喧噪なんてなく
なっちゃう。今、現代人に足りないのは、あくまで
現実の中の癒しなんかじゃない。明るい未来を夢見
ることなんではないだろうか。確かにそれは人によ
っては絵空事かもしれない。でも、それが世界を変
える事だってある。AQUA自体は、自分らの事を『CA
RTOON HEROES』（おもちゃの英雄達）と評している
けど、構わないじゃないか。夢は願えば叶う、元気
があれば何でもできる。それが、たとえ人から笑わ
れてたって、満願が成就したらそいつらを笑い飛ば
してやろう。現代社会に疲れた人は是非、聴いてみ
るといい。この一枚で明るい未来を夢見る事ができ
るのなら、AQUAはずっと、おもちゃの英雄達でも構
わないんである。