先日、クレイージ・ケン・バンド（以下CKB）を初
めて聴いた。もともと、自分の興味の対象として、
「なんか、この人色んな雑誌に出ているけど、一
体何者なんだろう？」大体、僕が見かけるのがフ
ァッション系の雑誌だったので、モデルさんなの
かと思ったが、それにしては年も行き過ぎている
し、かといって俳優さんてわけでもないだろう。
そんなある日、CKBの表記を目にして初めて「あ
あ、この人はミュージシャンなのか」ということ
を知った。真っ先に浮かぶのは、有りがちだがハ
イ・スタンダード、原爆オナニーズの横山健くん。
彼と同姓同名ということもあり（漢字は違います
が）、コア系？と思ったのだが、やはりそれにし
ては年が行き過ぎている。そう、何度も言ってし
まうと、本人に申し訳ないのだが、その年令と重
ね合わせて、どのようなジャンルの人間なのかが
自分の疑問となって、横山剣幻想というのは、膨
らむ一方であった。

そのうち、色々な事がわかってきた。館ひろしの
在籍していたクールスにいたこともあるなど、割
と音学歴は長いということだったり、僕が働いて
いる関内という街でしょっちゅう、ライブを行っ
ているとか。それでも、やはり本人の歌声や曲を
聴かない事には素直に評価の対象にもならない。
この時点では、横山剣はまだ、イロモノである。
本物指向というほど、僕の耳は肥えているわけで
はない。それはCDが１０００枚を超えた今でも思
うわけだが、僕はただの音楽ファンである。その
音楽が自分にとって、気持ちがいいか、気持ちが
よくないか。その賭けをとうとう、先日レンタル
という形であるが、試行してみることにした。
（レンタル如きで、ここまで大層にいうことでも
ないとは思うが（苦笑））

しかし、まぁCKBのアルバムというのは食指をそ
そられるものが多い。最新アルバムの『７７７』
もそうだけど、『肉体関係』とか何かきらびやか
というか、怪しいとういうか。そこにどんな音学
性が潜んでいるかが全く想像できない。初めての
アーティストっていうと、ある程度知っている曲
があるとか、そのアーティストを表すタイトルと
いうかでセレクトできるのだけれど、CKBに関し
ていうとそれらの参考資料が全く自分の頭の中に
ないので特に頭を悩ませたが、そういうときこそ
音楽ファンとしての直感に頼るしかない。語感と
か、チラッと彼等を見かけたときのキーワード。
それらを統合していくと、今回はとりあえず『グ
ランツーリズモ』を借りてみようと思った。

なるほど、なるほど。見た目とは裏腹にいい声し
てるんだなぁ、というのが最初の感想だろうか。
程よく枯れているけど脂ギラギラって感じのきわ
めて濃ゆい感じ。そしてギャグとも真剣ともいえ
る紙一重に粋でクスリとしてしまう歌詞、そして
熟成に熟成を重ねた音の絡み合い。見事に本格派
じゃないか。手触りとしては、氣志團に近いかも
しれない。なるほど、これが彼等の魅力か。氣志
團とCKBに共通しているもの、それは「ダサカッ
コいいの一回り」これに尽きるといっていい。そ
して、意外というかその雑多な音学性は氣志團よ
りもベテランだろうけど、９０年代渋谷系っぽい
マニアックなモンド感がある。だから、何度も書
くようだけど僕のような９０年代ミュージック・
チルドレンにとっては、その濃ゆささえも、ツル
ルッと体の中に入ってきた。

見た目とのギャップとか、雑多な音楽性とかこの
バンドにはビックリしたことが多かった。この意
外性こそ、初めて聴いてみるアーティストへの期
待感だとしたら、そのハードルは見事にクリアし
てしまった。勢いづけにもよし。お部屋のリラク
シン・ミュージックにもよし、旅行のお供にもよ
し。CKBの熟練の業は、僕のような少しオジサン
化しつつある音楽ファンには素直にリスペクトの
対象にあたる。この先、もっとブレイクしたとし
ても、彼等は関内でライブをし続けるだろう。周
りの喧噪にも素知らぬ顔で。そんな飄々した佇ま
いは意外性に包まれた彼等のキャラクターとは正
反対に見た目通り、この先も音楽界をスイスイ渡
っていくのだろう。その姿勢こそクールだし、あ
る意味クレイジーである。このバンドは色んな意
味でクセになりそうな予感さえするのであった。