ライムスターには実は、並々ならぬ興味があっ
た。全く他ジャンルの人間にリミックスを依頼
した『ウワサの伴奏』や、同ジャンルでもキッ
ク・ザ・カン・クルーなんかとジョイントして
ライムしちゃうところとか、着眼点が僕に極め
て近い気がしたのは、気のせいではないなぁ、
そんなことを雑誌の記事等で眺めていた。そし
て、ライムスターといえば、宇多丸のモーヲタ
（モーニング娘。オタクの意）っぷり、これに
尽きようか。この辺から絶対、僕が聴くべきア
ーティストなのでは？と思い、少し前に借りて
きました、『ウワサの真相』。

聴いてみて最初の感想は、「ああ、やはり」と
いうべきバラエティに富んだトラックの数々だ
ろうか。かといって、そのバラエティは決して
イロモノに終わらない硬派な印象さえ受ける。
そして、その中で展開されるライムは、割と時
事的な単語とかが随所に入っていて、それが１
曲１曲に個性をもたらしているので、全く退屈
しない出来になっている。だから、ただのパー
ティー・ソングに終わらない気楽さがない。な
んだろう、問題提起とかしちゃってる気もする。
かといって、その問題提起は少し前の反戦ソン
グのような深刻な問題ではなく、あくまで軽や
かに洒落としての心憎さがある。その単語感覚
は芸能人でいうと、関根勤に近いというと、ち
ょっとわかりやすくなるのかな。だから、この
グループは玄人受けといっちゃ、玄人受けの音
楽である、これは断言していいと思う。

僕はライムスターには、きわめてジャーナリス
ティックなものを感じる。むろん、前述したよ
うにそんなにお硬いものではない。新聞でいう
と、３面記事的というか、社会面の割とトホホ
な記事。ちょっと、心が和らぐ生活面。興味深
い内容の意識調査みたいな、ある一定の捻くれ
者しか見ないような記事に着眼点を置いた作風
が、かえって風刺漫画のように神経に届いてい
くものがある。

例えば、『グッド・オール・デイズ』。特にこ
のアルバムの中で好きなトラックではないのだ
が、響くものがある。この曲は単純に何らかの
仕事に就いている人や、戦争を経験した老人や、
子供を思いやる父親の愚痴を延々ライムし続け
る、それだけの作品なんだが、その病んだ日本
の特に大勢が気になるわけでもない問題をチク
チクと風刺する姿勢は、ついニヤニヤしてしま
う。このニヤニヤこそ、芸能人でいうと関根勤
っぽい所以であり、ジャーナリストの学校を卒
業した僕とかのような捻くれ者は、否が応でも
食い付いてしまう何かがある。これからも、ラ
イムスターには重箱の隅を突くような３面記事
的プチ・ジャーナリズムを貫いてほしい。たと
え、それが大勢に響かなくても、ニンマリして
しまう人は必ずいるのだから。