(179) 僕らはみんな、生きている◆◆THE HIGH-LOWS--バームクーヘン◆◆ |
投稿者:nabes
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お陰さまで、メルマガGRAD ALL OVERも今回で150号 です。最近登録した方も、または昔から登録してい る方も含め、まずは本当にありがとうございます。 しかし、何ですね。軽くCDラックを見やると、まだ まだ書いてないCDに溢れている訳で、たかが150枚 なんだなぁ、と思う次第です。まだまだ、氷山の一 角な訳で、JUDY AND MARYやYUKIちゃんのように、 そのうち5遍も書いているテーマもあれば、全作持 っているのに、まだ一回も書いていないOASISやFAT OY SLIMのような存在もいるわけで、まだまだこれ からと兜の尾を改めて締める思いです。まずは、今 後ともよろしくお願いします。
さて、記念すべき150回ということで、今回はハイ ロウズである。やはり自分の中でのモスト・フェイ バリット・バンドの一つなので、節目節目には書い ておきたいと思うのだが、実はもう一つ理由があっ て、凄い好きなミュージシャン(バンド)に限って、 書くのが結構難しかったりする。だって、最高であ る、その一言で終了してしまうんだもの。そして、 それがそのミュージシャンに於いて最高傑作の一つ であったら、尚更である。最高な人たちが最高の演 奏をしている、もう本当はそれだけで充分であり、 そこに余計な詮索とか、ごたくは必要ではない。で も、そんな最高な作品だからこそ、色々な人たちに 聴いてほしい。だから、いつもより少しばかり、キ ーボードを打つ指に気合いも入る。ハイロウズの、 『バームクーヘン』は、そんな節目に書かざるを得 ないほど、最高の作品の一つである。
とにかく、ロックンロールという一つのキーワード をもとに、色々なエッセンスが要所で主張し合って いて、そして、そのどれもが全く死ぬ事なく、上手 い具合で共存し合っている。ヒロトの声、胸に響く 歌詞。マーシーの荒いギター、コーラス、そして思 わず涙が出るほど、切なくなるメロディ。白井さん のゴキゲンなピアノ、調さんや大島くんの正確なリ ズム。そのすべてが「俺が俺が」と主張を続けて、 どれも引く気配がないから、その演奏のテンション はガンガンに上がっていく。もはや、天井知らずに のぼり続け極上のグルーヴを産み出している。やは り、各人とも一流のキャリアの賜物であり、同時に そこにおごることのない、「その先」をキッチリ見 つめている感がヒシヒシと見える。結構、録音状態 は粗い感じなのだが、それも逆にシンプル・イズ・ ベストであり、ライブのようなうねりも生じている のが嬉しい。やはり、ハイロウズってライブ・バン ドなんだよなぁと思う。
そうそう、ハイロウズくらいだろうか。自分がこん なにライブを見にいくのは。大体、赤坂ブリッツや 渋谷公会堂など、適度な広さのホールで行うので、 ドームみたいな拡散した感じはないし、ある程度、 後ろで見えないなぁと思っていても、ヒロトの声は まるで最前列にいるかのように、いつも僕の中に届 いてくる。独特のMCもなんか、可愛くてほのぼす るし、もちろんジーンとくるような心の震えも何回 か生まれる。そして、我を忘れるくらいグシャグシ ャに踊るナンバーで、自分はライブに来ている事を 感じさせてくれる。次の日の筋肉痛なんて、考えて られるか!というくらい体を動かし、汗をかく。 (さすがに、最近は年なのか、イマイチそこまで体 を虐められなくなっている自分もいるんだけど)そ う、ハイロウズを聴いていると、とっても生きてい るという実感に包まれる。ここで突然、ブルーハー ツの話を持ち出して恐縮だが、ブルーハーツを聴く と、「生きなくちゃ」と思う。その観念も超えて、 生きているなぁという究極のトランス感。これこそ、 ブルーハーツとハイロウズの違いなのかもしれない。
「このアルバムはブルーハーツの手触りに似ている」
マーシーの有名なインタビューの一節だが、この観 点から聴くと、何となく意味がわかってきた。『バ ームクーヘン』の全編に流れる切迫感がもしかした ら、「生きなくちゃ」というブルーハーツに近いも のなのかもしれない。でも、僕らはわかっている。 そこにはもはや、もがきや苦しみなど無い。「生き なくちゃ」を超えた「生きている」という事実。そ れこそ、『バームクーヘン』が名作たる所以なのだ。 生きている事に陶酔できること、それが僕がハイロ ウズを聴く理由であり、要所要所でしか、それは書 く事ができない最大の理由なのである。
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2003年06月05日 (木) 18時16分 |
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