(159) バーリ・トゥード・ミュージック◆◆SUITE CHIC--WHEN POP HITS THE FAN◆◆ |
投稿者:nabes
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前に安室奈美恵の回で、離婚した今だからこそ お楽しみはこれからだ。と書いた事があった。 ある程度売り上げの落ち着いた今こそ、小室哲 哉をもう一度、起用して肩の力が抜けた上質な 作品を、としめくくった。残念ながらその願い は叶わなかったが、予想もしてなかった形で安 室奈美恵は僕らの前に姿を現した。それが、今 回のSUITE CHICである。
そもそも発端はVERBAL(m-flo)と今井了助の二 人が発した、「日本でジャネットやジェニファ ー・ロペスみたいな存在のアーティストって誰 だろう?」「やっぱ、アムロちゃんでしょ」と いう他愛もない雑談から始まり、そこから様々 なアーティスト、プロデューサー陣が参加する 一大ユニット、それがSUITE CHICである。 今回のユニットの大きな特徴は、やはり意外性 という事に他ならない。「え、アムロちゃんと この人が!?」という意外性、例えばZEEBRAや DABO、SHAKKAZOMBIEのTSUTCHIEなど、ある意味 本格派との対峙となっている。だから、もしか したら安室ちゃんの内部には賛否両論もあった であろう事が用意に予想がつく。つまり、その ユニットは売れるのか!?ということである。 日本のレコード市場において、一世を風靡した 安室奈美恵という商売道具。その新たな可能性 を模索するのは決して悪い事ではない。がしか し、そこにはリスクが常に付きまとう。もしも、 その賭けに失敗したが最後、安室奈美恵という 商品価値は一気に地に落ちるといっても過言で はない。それが善くも悪くも日本のレコード市 場の特徴といえる。果たしてその賭けに安室奈 美恵は勝つ事ができたのであろうか?
あくまで僕なりの私見を書くと、その賭けに勝 つ事ができたんじゃないかなぁと思う。まずは クールなジャケットに尽きる。あくまで安室奈 美恵に頼る事のないイラストのジャケは、かな り目をひく。今までにないタッチでこのユニッ トで勝ちにきている姿勢をガンガンに汲み取る ことができるし、SUITE CHICのロゴに座る女性 のイラストは所信表明及び、ある種の開き直り が潔く表現されいて、「これは何かやらかして くれるんではなかろうか?」という予感に溢れ ている。 もちろん、そこまで掴みながら音の方がスカス カだと本末転倒だが、そこは(あえて)非メイ ン・ストリームながら確かな実力を持ったプロ デューサー陣の実力の見せ所である。今までタ メにタメた実力を統べて凝縮して、安室奈美恵 という最高の媒体に組み込む事ができている。 楽曲自体は静かなビートが主であるが、そこに はいかなる場合でもBGM、そしてクラブなどで ゆったり踊る事のできる珠玉のポップがカッコ よくディスプレイされていく。このユニットを 機に安室奈美恵というアーティストの再評価に も通じるし、安室奈美恵から入ったファンは、 こんな更に深い本格R&Bの音に興味を示してい くことになるだろう。
考えてみると、これって格闘技イベントの「P RIDE」に似ている。あらゆる格闘家を一つのル ールのもと、一つのリングを提供して闘わせる。 今では説明不要のイベントだが、最初は高田延 彦とヒクソン・グレーシーというメジャーな存 在を闘わせるという目的のもとで行われた。そ こから桜庭とか吉田秀彦などのヒーローを産み 出していく。プロレス・ファンは格闘技の未知 なる強豪に夢を膨らませ、プロレスに少なから ずの偏見を抱いていた人は改めてプロレスラー の強さを確認する。 そう考えると音楽の世界もバーリ・トゥード化 が進んできたのかもしれない。メジャーや非メ ジャーという垣根を見事にとっぱらった本格指 向のこの作品は、なんでもありというバーリ・ トゥードの理念を体現していて色々な可能性を また産み出す事ができるであろう。そう考える とこのユニットを寛大に世に送りだしたavexと いう会社の懐には脱帽せざるを得ない。あとは このCDがコピーコントロールじゃなければ、も っと世に届くと思うけど。色々な弊害はあるだ ろうけどね。
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2003年04月02日 (水) 17時56分 |
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