(158) 戦後日本の御褒美◆◆植木等--スーパーベスト◆◆ |
投稿者:nabes
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僕にとって、植木等は当然のようにリアルタイム ではない。しかし、最初に彼から受けたインパク トというのは絶大で、今でも心の中に最高の存在 として君臨している理想の大人である。 僕の世代(昭和48年生まれ)からしたら、故・ 高橋良明の主演した「おヨビでない奴!」の事を 覚えている方は割と多いと思う。一世を風靡した 「うちの子にかぎって」でブレイクした、高橋良 明の出世作にして最期の檜舞台となったドラマ。 僕はこのドラマが好きだった。 子・高橋良明、親・所ジョージ、祖父・植木等の C調家族のドタバタコメディなわけだが、そこで の高橋良明の嬉々とした演技は、確実にその後の 方向性を見い出したいいドラマだった。その後、 何度か再放送も放送され最近ではDVDボックスも 発売したらしいので、やはりその需要は僕だけで なく、一般的に浸透していただけに同世代の僕と しては高橋良明の訃報は、かなりショッキングな 出来事であった。そして、そこに共演していた植 木等の存在は、「なるほど、これもいいのか」と 変な納得を生み、多大な影響を受けたといっても 過言ではないだろう。
そこから、波及してクレージー・キャッツのアル バムとか借りてみたが、テープに入れたことも災 いして最近は聞く機会が減ったわけだが、最近仕 事の関係で再び彼の『スーパーベスト』を借りて きて再び聴く機会に恵まれた。 いや〜、しかし何度聴いてもいいなあ。確かにこ の当時の日本のメイン・ストリームは美空ひばり であり、石原裕二郎であったかもしれない。植木 等は当時はきっとそんなニ大正統派からしたら、 異端でありアナーキーな存在であったかもしれな い。でも、そんな異端な音楽は今でも時を超え、 聴衆に愛され本人も健在ときたら、それはそれで 痛快なハナシではないか。
誰でも一度は聴いた事のある『スーダラ節』から 始まり『無責任一代男』、『ハイ、それまでョ』、 『これが男の生きる道』、『だまって俺について 来い』、そして植木等再評価の極み『スーダラ伝 説』に至るまでの13曲、都合40分、多少アレ ンジは変わっているものの、まさにゴールデンヒ ットといってよい。まぁ、欲を言えば『スーダラ 伝説』に収録されている『五万節』や『遺憾に存 じます』、『ウンジャラゲ』辺りがバラで聴ける となおいいが、それはうちの中のテープでも探し て聴くとしよう。ひたすらC調で、ハッピーで音 楽という名の娯楽をもって戦後の日本を元気にす る効果満点であった事が伺える、まさに「みんな のうた」である。
もはや避けて通れない感があるが、世界は戦争の 真っただ中である。その度に人々は不慮の死を遂 げたりして、国は一瞬にして再起不能な状態に陥 ってしまう。ハッキリいって今回の戦争に関して は、全く見ていない。だから詳しこともいえない し、持論を展開する気もない。がしかし、いつも 考えるのは負けた国の「その後」である。焼け野 原に陥った国をゼロから立て直し、また元気な状 態に戻すという途方もない作業は、想像を絶する ものであろう。そう考えると呑気なことをいうよ うだが、アメリカの傘下に入り立て直す事ができ た日本という国はある意味幸せな国なのかもしれ ない。そして、立て直すにあたり、やはり大切な のは娯楽という名の御褒美であり、植木等は美空 ひばりなどと同じように戦後の日本になくてはな らない御褒美だったのかもしれない。確かに方法 論は違えど、アナーキーの中の王道ど真ん中を突 っ走った見事な娯楽なのである。
結局、今の戦争は宗教戦争である。世界に宗教が 幾つか存在する限りは戦争という事象が終わる事 はないといってよい。そして、そのたび日本とい う無宗教な島国は何かとやり玉にあがってしまう のだろう。『イマジン』なんかでそんな世の中を 憂うのもいいが、今後僕は戦争が起こる度、植木 等を聴いてしまいそうだ。どの国も元気でいます ように…
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2003年03月27日 (木) 17時09分 |
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