(145) 思い出玉手箱◆◆THE YELLOW MONKEY--GOLDEN YEARS SINGLES 1996-2001◆◆ |
投稿者:nabes
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シングルとは思い出である。
いきなり結論から話してしまったが、要はそう いうことだ。アルバムの曲というのは、買った 直後は聴くものだが、次第に風化していく代物 である。もちろん、その中には名曲の誉れ高い ものもあり、残るものもあるが大抵はシングル ・カットされたり、ベスト盤に収録という形で 人の記憶に取り残されないように生きてくる。
しかし、シングルというのはズバリ、その瞬間 に自分の中に深く入り込んでいく。それはどん なアーティストにしろ、「ゲゲ!これこそ、今 の俺じゃん」という形でジャスト・フィットし て、後々まで内臓されていく。それが初めて聴 くアーティストであるならば、それがやがて、 好きなアーティストの仲間入りを果たす、大概 はそんなメカニズムの中で機能している。THE YELLOW MONKEY(イエモンと略す)のベストを 借りてきて思った事はそういうことだ。ここに は、そんな思い出がギッシリ詰まった玉手箱な のである。
今回借りてきたのはイエモンの後期ベスト『GO LDEN YEARS SINGLES 1996-2001』。いわゆるブ レイク後というやつだ。活動休止直前の他プロ デューサー陣による作品もあれど、そんな混沌 こそイエモンという希望と絶望と少々の皮肉と、 淫美な世界観に溢れた曲で埋められている。
しかし、まぁ…イエモンの曲を聴くと僕は笑っ てしまう。あまりに真剣にカッコよすぎて。何 だろうね、この痛快なまでに愉快なのは。氣志 團とかに近いかな、勿論全体のアプローチは全 然違うものの。『LOVE LOVE SHOW』は桑田佳佑 を彷佛とさせる英語日本語な歌詞で完全にポッ プ・マーケットを視野に入れたことを宣言した。 キャッチーなサウンドとチラチラ見えかくれす る病んだ感じとか最高である。『BURN』といえ ば、伝説の第1回フジロックである。確実にあ の日、イエモンは何かを構築しようとしていた。 しかし、会場は大嵐。構築もクソも土台から雪 崩を起こしそうなバッド・コンディションの中、 唯一この曲で会場はヒートした。そんな失敗も 彼ららしくて、今となっては微笑ましい。『球 根』が彼らのキャリアの中で一番売れたそうで ある。ていうか暗いよ、この曲(笑)しかし、 一番泣けるかも。全てが無駄じゃなかった事が この曲の成功で伝わってくる。彼らは何も間違 ってなかったのである。『SO YOUNG』は一番好 きである。昔つきあっていた彼女との初デート においてカラオケで歌ったのだが、今考えると どんな気持ちで聞いていたのだろう。ただ、老 いていけばいくほど、この曲とは長くつきあえ る。『バラ色の日々』は朝本浩文プロデュース ではあるが、歌詞と曲が見事にガッチリ、スク ラムを組んだ壮大な曲である。退廃的であるが、 1ミリも絶望がない。吉井和哉は叫ぶ「ARE YO U BELIEVER?」と。活動休止前の2曲『BRILLIA NT WORLD』『プライマル。』は割とアッサリし ている。「え?これで終わり??」てくらいに。 でも、そんな潔いサヨナラがあってもいい。そ れもイエモンである。
きっと、こうなのだろう。イエモンってそのル ックスとは裏腹に実に人間臭いんである。とい うか、あろルックスだからこそ、人間臭さが際 立つ。成功もあり、失敗もあり、喜びも悲しみ も、夢も未来も後悔も、全ての感情を包み隠さ ず歌っているからこそ、その曲達は基本線を崩 さないもののバラエティに富んでいて、ドラマ ティックである。人間はそう、生きている事こ そ、ドラマなんである。
「夜よ、負けんなよ。朝に負けんなよ。 何も答えが出てないじゃないか。」 (パール)
もう、2年になるのか。イエモンが活動休止し て。ヒーセはいよいよ活動を再開するが、早く 吉井和哉の人間臭に溢れた曲が聴きたい。しか も、シングルで。そしたら、また彼の曲は僕の 玉手箱の中に入る事になるだろう。
大丈夫、僕の玉手箱はまだ、空いているよ。
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2003年02月11日 (火) 21時14分 |
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