(144) ワン・センテンス・マジック◆◆DREAMS COME TRUE--MONKEY GIRL ODYSSEY◆◆ |
投稿者:nabes
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むむ…もしかすると、現時点におけるドリカムの 最新作ってこの作品になるのかな。結構長い時間 空いているなぁと、まず思った。下世話なことい えば、今は少し隠れてた方がいいのかしら?とか 思ってしまうわけだが、日本有数のポップ・グル ープが元メンバーの逮捕、メインヴォーカルの不 倫みたいなバッド・イメージで消えていってしま うのは誠に惜しい。つーか、そんなヤワな人達で もないだろう。天下の吉田美和だぜ。ということ で、今日は祈・復活の意味を込めて、ドリカムの 『MONKEY GIRL ODYSSEY』について書いてみよう。
とはいえ、この人達の最大の魅力は今まで様々な ところでも書かれているように、恋愛というフィ ルタを通した上での共感に他ならない。「あるよ ね、こういうこと」「わかるわかる〜」という共 通体験を、あくまでフランクに爽やかな感じの口 調で歌う事により、聴き手のガードをどかし、中 に入り込ませてゆく。まぁ、実際は共通体験とい うよりは、こういう風に今の恋人と恋に落ちたい なぁという希望的なものが殆どだったりするが、 歌詞のワン・センテンスをでっかいスプーンでグ イッとすくい、各々のイマジネーションで膨らま せていくという魔法のような、でっかいワン・セ ンテンスこそ、ドリカムの肝なのであると僕は思 っている。それは例えば、曲名とかでいうと顕著 で過去の作品で貴恐縮だが、『うれし恥ずかし朝 帰り』とかの朝帰りという、否が応にもHな方に イマジネーションを持ってこざるをえない単語を、 歌の中でその最中の何とも焦っちゃうけど、でも 嬉しいなぁという振子のように揺れる感情を細か に歌う事で間違いなくHな方には流れていかない。 それとか、『サンキュー』でもなく『THANK YOU』 でもなく、あくまで『サンキュ.』という可愛く 止める事によって失恋という共有体験に側にいて くれた人への無理してるんだけど、私は大丈夫み たいな精一杯の強がりを見事に表している。
もちろん、今回のアルバムでもそのワン・センテ ンスのイマジネーションは健在で、細川ふみえの と同名異曲の『スキスキスー』も好きという恋愛 欲(ある意味、性欲と言おう)と恋愛というのは お腹が空くという食欲の、まぁ人間の三大欲の2 つを押さえ、可愛くネーミングしたことにより、 恋愛している時の甘い空間を軽いタッチで演出し ている。 続けていうと、『今日この佳き日に』という曲の ある。まぁ、言わずもがなだが結婚式直前の花嫁 の高ぶりつつも、俯瞰した視線で心象風景を映し 出す歌だが、「佳き日に」という結婚式でしか使 われない単語を使う事で、恋愛と結婚のちょうど 間の厳粛な気持ちが、これ以上ないくらい描かれ ていると思う。
ただ、そこには中村正人の楽曲の柔らかくもハッ キリしたファンクを基としたベースと、効果的に 使われているオーケストラアレンジが、あたかも そんなワン・センテンスの魔法を優しくコーティ ングしていて、あくまで幻想的にその瞬間を演出 してくれているのも聴き逃してはいけない重要な ファクターの一つである。実のところ、今回の雑 文は彼の曲について書こうと思ってたんだけど、 それはまた次の機会にでも譲ろう。
ということで、結局吉田美和の作詞能力について 絶賛する形になってしまったが、たったワン・セ ンテンスで世界を変えるドリカムの歌はどんなに R&Bが現代のストリート、つまり普段着感覚で着 飾ろうが、全く負けるものでない。韻を踏もうが、 タメ語だろうが、大事なのはたった一つの言葉で、 無限に聴き手に広がっていくイマジネーションな のだ。そこに細かい説明なんていらないのである。
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2003年02月09日 (日) 13時52分 |
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