急にバンプが聴きたくなってきた。それほど僕は
このバンドを熱心に聴く方ではないかもしれない。
敢えて言えば、『天体観測』はカラオケで十八番
だけれど『ハルジオン』はあまり受けなかったの
で、そんなに歌わない。そのくらいのレベルのフ
ァンである。でも『jupiter』は借りて、うちの
パソコンの中に入っている。かといって、ヘヴィ
ローテーションすることもなく、どちらかという
と、聴かない方かもしれない。何がいけないわけ
ではない。きっと熱心に聴けばいいんだろうとい
う事もわかっている。がしかし、イマイチ去年は
そんなに聴かなかった。

１曲目の『STAGE OF THE GROUND』は好きだ。ほ
とばしる青さと、コール＆レスポンス。アルバム
のスタートを飾るに相応しい勢いのある曲だ。８
月のロック・イン・ジャパン・フェスでも澄み渡
る青空にマッチしていて、見渡せば僕の周りの人
達はみんな拳を振り上げて熱唱していた。僕はそ
れを横目で見やりながら、体を音に任せ揺れてい
た。


ぼんやり。


そんな表現がピッタリだった。おそらく、初めて
僕が自分の老いというものを感じた瞬間だったの
かも。あとで雑誌を読むと、その日のライブはあ
まりいい出来ではなかったそうだが、それはこの
ぼんやりのせいとは無関係なのだろう。かつて、
ブルーハーツで衝動的に体の限界を考えず、狂っ
たように踊っていた僕は、そこにはいなかった。
そこまで言っておきながらで何だが、藤原基央の
声は好きだ。やさぐれているような、それでいて
もがき苦しみながら、必死で上だけを見据えるよ
うな一途な声は、このバンドの中で突出した表現
力を持っている。がしかし、そんな理屈を何の寄
り道もなく導いてしまった自分の分析というもの
にまた一つ、老いというものを嫌が応でも感じる。
そういう衝動を自分の中に感じないというのは、
数多いバンドの中でも初めての事である。これっ
て、どういうことなんだろう。


　　　　　　　　もし。。


バンプが世に現れたのが、あと１０年早かったら
と仮定する。もっと、盛り上がれたかもと思った
りする。実際、それだけの実力、影響力を持った
いいバンドだと思うから尚更であろう。僕はやは
り、年をとり続けている。犬は吠えるがキャラバ
ンは進むというのなら、もし、その犬が吠えた時
に、ふと振り向いていたのなら、そしてそこにバ
ンプがいたとしたら、違う接し方があったかもし
れない。というか、きっと脳みそを撃ち抜かれる
ような重要なバンドの一つになっていたかもしれ
ない。

　　　　　　　　
　　　　　　　　まぁ。。。


あくまで全ては仮定の話である。今２００３年の
中でバンプは生きていて、僕は３０才になろうと
している。そして、こう考えるようにしている。
解釈は違えど、僕の中でブルーハーツ、NIRVANA
などに繋がる重要なバンドの一つなんだろう、で
なければ、こんなに深く考えたりはしないかもし
れない。バンプの青さというのは現時点での最大
の武器かもしれない。だからこそ、僕はそれ以上
を求めてしまいたい。人は青いままでは生きられ
ないのだから。１０〜２０代だけでなく、もっと
広い方向にそのヒリヒリしたマシンガンを乱射で
きるような本当の意味の「みんなのうた」、これ
が作れた時、初めてバンプオブチキンは僕の体の
中に染み込んでくる。だから、敢えて言ってしま
おう。僕の中では未だ一流半。でも木星と地球の
ように、遠いようで近いし、近いようで遠い。ち
ゃんと視界に入ってきたときは、きっと望遠鏡は
いらない筈だ。