先日、実家の茨城に帰った。とはいっても今年は しょっちゅう帰郷しているので、これといった感 慨は全く無い。今年のライフ・スケジュールに既 に組み込まれているものとして、成立している。 大概、帰郷する場合、僕は夜働いているので、仕 事終了後、一度家に帰り身支度を整え、そのまま 寝ずに帰郷する。そうしないと、1週間の仕事の 疲れから熟睡してしまったが最後、その日は間違 い無く帰れなくなってしまうからである。この日 もある程度の身支度を(といっても、そう何日も 実家にはいないので、数枚の下着と次の日の仕事 の用意、そして実家で遊ぶためのゲームのメモリ ーカードくらいなんだけどね)して昼過ぎに家を 出た。
大和から横浜まで出て、東海道線に乗り込む。こ の東海道線というやつは、比較的混んでる印象が 僕の中にはあるのだが、この日は空いていた。こ れ幸いとばかり、ボックスシートに乗り込むと東 南アジア系の女の人がチラッと僕の方を見やった が、その後すぐにベージュのキャスケットを目深 に被り熟睡してしまった。僕は雑誌を読みながら、 CDをセットする。ここで、僕はハッと気付いた。 いつも、僕は帰郷の際はある程度CDを持っていく。 もちろん、片道2時間半の道中のお供をその時の 気分でチョイスしていくのだが、それを今回怠っ てしまった。何たる不覚!鞄の中に入っているの はツタヤで借りたマイケル・ジャクソンの『HIST ORY』とドリカムの『7月7日、晴れ』のサント ラ。明らかに帰郷の際に聞くCDではない、少なく とも今日の僕の気分としては。よ〜く、鞄の中を 確かめると桑田佳佑の新譜が入っていたが、これ は弟の誕生日プレゼントとして買ったものなので、 封を切る訳にはいかない。そんな野暮な事はたと え、身内でもしちゃあいけない。これは困ったな ぁ、、と考えていると、もう1枚CDが出てきた。 ジェニファー・ロペスの『JLO』。仕事の友人が 仕事場に置きっぱなしだったのでi-tunesに取り 込むかと1日拝借させてもらったものだ。仕方が ない、これを聴くとするか。CDを差し込んだ。
ジェニファー・ロペス。音楽のみならず、女優と しても『17歳のカルテ』『トゥームレイダー』 『ザ・セル』などで大活躍の彼女。残念ながら、 どれも見た事ない。『17歳の〜』は好きだから 絶対見るべき!とよくいわれるのだが、もともと そんなにビデオを借りるという性質でもないので、 依然記憶のメモリの中で彷徨っていたりする。し かし、この人の音楽が最近というか、今年は自分 の中にはスコーンと入ってくる。キッカケはDVD だったりするが、『LET'S GET LOUD』が耳から離 れない吸引力を持ってしばらく、僕のヘビー・ロ ーテーションだった。彼女のラテンな感じのアッ パーな、それでいて情熱的な柔らかいラインの曲 は血液の上昇を助長させるものであった事から、 このCDを拝借した次第であった。
電車は東京で終点を迎え、上野まで向かい、常磐 線に乗った。駅のコンビニでおにぎり(シャケマ ヨネーズ)とヒメリンゴジュースというのを買い、 発車5分前の電車に飛び乗った。そして、親にメ ールを打ちヒメリンゴジュースを一飲みした後、 CDをALL REPEATにした。起きた時にCDが鳴ってい ないのは、何となく寂しいからだ。さぁ、これで 心おきなく道中寝る事ができる。実家までは約1 時間半、仮眠にはちょうどいい時間である。しか し、不思議な事にすぐに寝つけなかった。北千住 近辺に差し掛かって荒川が見えてきた。夕焼けに 覆いつくされそうな荒川の風景、水面は夕陽の光 でキラキラして、その周りでは子供達が遊んでた りしている。なんか懐かしいようで、切ないよう で、澄んだ風景に目を奪われてたら、少し起きな がら道中をいくのも悪く無いななんて思えてきた。
僕は専門学校時代、実家の茨城から高田馬場まで 通っていた。そして帰る頃にはいつも、荒川を見 ていた。そうか、懐かしいのはそのせいか。そん なに大きくない音で『JLO』は真綿のような柔ら かさで常磐線のスピードと比例するようにゆっく り時を刻んでいく。ジェニファー・ロペスと常磐 線、荒川。帰郷の風景には何にもリンクしない筈 なんだけど、とってもいい感じ。こんな心地よい 予想外なら大歓迎だなぁ。あ、だんだん、眠くな ってきた・・・・
気がついたら、待ち合わせの駅を思いっきり乗り 越してしまった。いつもなら、あちゃ〜!と思っ たりするが、まぁ、こんな日は予想外を存分に楽 しもう。家までは徒歩30分くらいあるけど、歩 いて帰ってみた。ある帰郷の風景、子守唄は『JL O』、全く繋がらないものだけど、心地よく流れ る空間。気がつくと、ヒメリンゴジュースは空に なり、夕陽は違う国にまた光を当てに出かけてた。
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