僕はウィル・スミスという人をあまりに、過少
評価し過ぎていたようである。彼の出ている映
画は『ID4』しか観た事がない。（『ALI』は観
たいと思ってたら終わっていた（苦笑））まぁ、
正直言うと、彼の主演映画にさほど興味を感じ
ない。つまりは、彼に対して何の知識も持って
いなかったというのが本音だろう、少なくとも
この１週間前までは。

もちろん、彼が役者の前にラッパーだという事
は知っていた。でもどうしても、映画のお陰で
大ブレイクみたいな匂いもあって、どちらも中
途半端だなぁという印象は拭えなかった。日本
人的感覚でいうなら、最近売れてる役者が、歌
を出してみました的なノリというとわかりやす
いであろう。そしてそこには、歌っている本人
的には見せ方も熟知しているので、さぞ御満悦
のように歌うが、聴いてる方としては、本業の
歌手の方と比べるのは酷だろうが、ぶっちゃけ
上手くない（笑）のが余計に痛々しく思えて切
なくなってしまう。まぁ、最近はなかなかそん
な人も減ったけれどね。

そりゃ、アメリカのショービズだから、タレン
ト＝才能と評されるように、何をやってもある
程度の点数をたたき出すのは簡単だろう。かえ
って、だからこそ、このウィル・スミスにもあ
くまで標準的な才能を使ってやってるのでは？
みたいな事を思ったのだが、それは本当に誤り
だったようだ。この場を借りて、彼及び彼のフ
ァンの方にはお詫びをしたい。ゴメンなさい。
それほど、彼のヒップホップは最高だと思う。

ということで彼のアルバム『WILLENNIUM』を借
りてきた。このレンタルというシステムは本当
に便利だ。いうなれば毒味のようなものである。
パソコンに落したとしても、気に入らなければ
消去すればいいし、うちの近くにあるTSUTAYA
では、毎週火曜日はCD１週間190円で借りられ
るので、ダメージは最小限度に抑える事ができ
る。もちろん、気に入ったものはその後もヘビ
ーローテションすればいいし、その後購入する
という事も充分にあり得る。考えてみれば、ブ
ルーハーツもレコードをレンタルしてきたとこ
から始まった。そんなある意味試食をしてみて、
ウィル・スミスは僕の中では好きな食べ物の範
疇にズッパリと入ってきた。

僕が常々思うのはヒップホップというジャンル
の定義である。どういうものがヒップホップな
のだろう？ロック畑の僕は、わからないまでと
はいかないが、イマイチ形の捉えられないもの
だと思っていた。ラップすればいいの？スクラ
ッチが入ってればいいの？黒人ならいいの？そ
んな初心者かい！ていうツッコミも辞さないほ
ど、よく考えてみた。このミクスチャーな世の
中では、ロックにもスクラッチは入るし、白人
はおろか、日本人だってヒップホップする。そ
んな中で僕が叩き出した結論は、読んで字のご
としという事であった。

ヒップがホップする。要はそんな音楽の事なん
じゃないの？そのビートに、韻を踏んだ感じの
軽い感じ、思わずお尻が浮き上がり、自然に手
を叩き、踊り出してしまうような、きわめて音
楽の原始的な型。そこにヒップホップというジ
ャンルの存在意義を見い出した。という、観点
からとらえると、この作品のウィル・スミスは
完全に、僕のヒップをホップさせた。ラップも
対訳を見る感じでは、必要以上に重くない、て
いうかＣ調なまでに軽い。そんな気楽さが楽し
さを増長させる。細かい事はどうでもいいよ、
踊ろうよ、愛しあおうよ。そんなシンプルさに
溢れている。タイトルの『WILLENNIUM』も世紀
の終わりと自分の名前の造語だが「俺、素敵！
俺、最高！！」でいい。

今は映画俳優としての顔が、どんどん膨らんで
アメリカショービズの中枢にドッカリと座って
いる彼だが、アルバム沢山作ってほしいなぁ。
彼を他の誰かに演じさせて、カメラの中に収め
ておくだけというのは勿体ない。ウィル・スミ
スという、きわめてハッピーなラッパーのヒッ
プホップで、僕はお尻を浮かせていたい。せっ
かく僕に、これがヒップホップの楽しさという
ものだという事、をわからせてくれた人間なん
だから。