(102) 人は下世話を求める。◆◆AEROSMITH--JUST PUSH PLAY◆◆ |
投稿者:nabes
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僕は男性なので購入する事はないのだが、コンビニ に平積みされてある、女性週刊誌というやつにそそ られる事が多々ある。ホントか嘘かもわからない、 芸能人のゴシップ。何だかどこから聞いたのかもわ からないような、嫁姑問題の確執。毒にも薬にもな らないような、でも記事として載っていると思わず 「はっ!」としてしまうどうでもいい特集。という 事で病院や床屋とかいくと、不思議と読んでいたり する。だけど、こんな事いうと何だけど、アレをお 金出して買う人の気がイマイチ知れない。
しかし、そんな真っ当な事を言えば言う程、下世話 なものに惹かれていく自分がいる。必要悪とまでは 言わないが、生活に一つのアクセントとして成立し ている事だけは間違いが無い。あるのと無いのでは おそらく、人生に雲泥の差を産んでいるといっても よい。下世話のない人生など、大塚さんのいない、 「めざましテレビ」、肉汁のない牛肉みたいなもの だ。ごめんなさい、何となく炎上して自分内の下世 話なキーワードを挙げてみました。
エアロスミスはもう、結成25年とか、そういうレ ベルの大御所的存在である。悠々自適な老後を送っ ていても誰も文句はいわないし、それだけのリスペ クトも集めている。がしかし、現時点での一番新し いアルバム『JUST PUSH PLAY』では、そんなリスペ クトもへし折るくらいの縦横無尽な暴れっぷりを見 せている。 今作はそんな長いキャリアの中で、初のセルフ・プ ロデュースだそうだ。言われてみれば、外国の作品 でプロデューサーの無いアルバムの方が珍しいか。 そして、ここまでの大物になれば嫌でも、誰かの監 修になるのはごく当然の事だ。それが、長いキャリ アをサヴァイブする錬金術なのだから。ところがエ アロはさすが百戦錬磨である。長いキャリアが無駄 じゃない事をこの作品で見事に示している。 いかにも、一般大衆受けしそうな先行シングル『JA DED』だったり、「なんでスティーブンって、そんな に切ない声でバラードを歌うの?」なんてツボを突 きまくる『FLY AWAY FROM HERE』、『LUV LIES』な どの涙腺爆発センチメンタルなバラード。そうかと 思うと、今のエレクトリックな波に乗り遅れちゃい けないという姿勢なのだろうが、そんな無理をして いる感の全く無い打ち込みのヘヴィ・ロックなナン バーも見受けられる。要は全く乗り遅れてない。自 然に現在に腰を下ろしているのが凄い。
きっと、この5人(特にスティーブンね)って50 になろうが子供のように今に敏感なんだろうな。年 をとるに従い、自分のライフスタイルなんて出来上 がりつつ、なかなか新しい慣習なんて受け入れられ ない回路が働いてもおかしくない筈なのに、いつま でも瑞々しいまでの新しさに飢えている。もちろん、 新しさに飢えているだけだったら、こうはいかない。 以前の自分達のいいとこも俯瞰して見つつ、「エア ロスミスっていったら、これだろ?」みたいな見放 さない優しいとこもあったりする。それを(特にス ティーブンの大きな口で)高笑いしつつ、作り上げ るっていうのは前述した下世話さがないと出来ない ような気がする。そう、エアロがこの長い時間、王 者に君臨してられるのは思わず「はっ!」とする下 世話さを持ち合わせているからに他ならない。
それが顕著に現れているのは、タイトル曲にもなっ ている2曲目『JUST PUSH PLAY』に尽きるだろう。 打ち込みから始まり、「何だか知っているんだよな ぁ」という曲調・・・ていうかテメェらの、最早ロ ック・クラシック『WALK THIS WAY』じゃねーか。 (笑)まぁ、自分達の歌をパクれば訴えられる事は ないだろうけど、もうちょっと工夫しろよ。コーラ スでも「♪WALK THIS WAY〜」なんて言ってるし。 (苦笑)でも、そんな曲をも楽しく「どうせ、わか っているんだよ、こんなのを求めているのを、キャ ハハハ!!」くらいのヤンチャに演奏されたら白旗 を上げるのみである。つくづく下世話なオジサン達 である。
という事で僕の中で下世話というのは、無邪気に、 そして貪欲に新しい事を行おうとする回路を持ち合 わせている事だと思う。エアロスミスがこの長い間、 無敵の王者でいられるのは、そういった回路が絶え ず動いているからだと思うし、第3者のプロデュー スにより、ある一定の抑制をされていた無邪気さが 何の歯止めさえなくして、追求している今作、しか もそのキャリアからくり出される無意識の確信犯的 な視点によるマーケティングは新たな黄金時代の予 感さえ感じられる。そう考えると下世話であるとい うのは、やっぱり悪い事ではないように思える。そ りゃ、CD屋にピンクのジャケでロボットのスカート がめくれ上がってたら、誰だって「おや?」って思 えるよね。エアロの繁栄は人がどれだけ、下世話を 求めているか?という事の動かぬ証拠だと思う。
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2002年09月20日 (金) 12時19分 |
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