(95) POP LIFEに殉じた男◆◆JUDY AND MARY--POP LIFE◆◆ |
投稿者:nabes
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いよいよTAKUYAが帰ってくる。僕が復帰を待望してい たミュージシャンの一人である。JUDY AND MARY(以 下ジュディマリ)の中期から後期の屋台骨としてトー タルプロデュースを行ってきた、美しくてシニカルで、 それでいて、純粋で耽美な世界観の持ち主がいよいよ ミュージックシーンに風穴を開けに帰ってきた。YUKI ちゃんも『PRISMIC』という今年の傑作を産み出した 事だし、タイミングとしてはバッチリといってよい。 ただ、僕の中では結構、すぐにソロとして活動するの かと思ってたので、(イメージとしてはユニコーン解 散後の民生やX JAPAN解散後のhideのような)意外な 感もあったが、誰よりもジュディマリに愛しさを注い だ男だけに、それだけのインターバルは必要だったの かもしれない。
ということで、そんなTAKUYAのジュディマリにおける ベストワークは何かといわれると、僕は『POP LIFE』 を挙げる。もちろん、『WARP』のとっても透明なジュ ディマリの音の回帰と、成長したメンバーの成熟度も 捨て難いが、『POP LIFE』の完成度は尋常では無い気 がする。 メンバーが当時それぞれが手負いの中、仕方なさと歯 痒さをギュッと良い音を作るエネルギーに集中させて、 その緊張感をスリリングに表現した傷だらけの傑作で ある。傷だらけゆえに求めるPOP LIFEが痛いほど、伝 わってくる。
緊張感と開放感は紙一重である。がしかし、勇気がい る。そこに踏み出すたった一歩に至るまでには、時間 がかかる。TAKUYAの苦悩はここにあった。自分が緊張 緩和のために右往左往すればする程、より硬くなって いってしまう悪循環。やはりその当時のTAKUYA一人で できるほど、ジュディマリというモンスター・バンド はヤワではない。そんな右往左往を繰り返しているう ちにYUKIという天才は力を振り絞り、数々の素晴らし い歌を作り上げた。その結論は、あまりにもシンプル な「音楽って素敵!歌うことって素敵!!」という結 論に他ならない。
「あたしのライフワーク、大地に響け 荒れ果てた世界に花を、強い笑顔を 傷だらけの胸に 自由を 歌いながら飛びのれ」 (ミュージック ファイター)
いっけん、フリージャズのようにアドリブで出来てし まったのでは?と思いたくなるこの曲にこそ、緊張感 から開放感への偉大な一歩を踏み出す瞬間の音を見事 に表現している。事実、このビデオクリップは、はっ きりいってカッコイイ。特にエスカレーターから飛び 降りてくるTAKUYAは最高にいい。そして、開放した後 に続くのは『イロトリドリノセカイ』。まさにTAKUYA' S WORLDといってもよいナイーブで抽象的で、空気の ような透明感。僕の中では数多いジュディマリの曲で 10本の指に入る。そして何といっても、このアルバ ムには『手紙をかくよ』が入っている。YUKIちゃんの 可愛さ、恩ちゃんの胸キュンな感じ、公太さんの優し さ、そしてTAKUYAの透明感を全てパックした「これぞ、 後期ジュディマリ!」とよびたくなる程の傑作だと思 う。
「あたしの悩み、迷い、生きる喜びの全てを 花束にして空に掲げながら、風の中で思い出してた
あなたが教えてくれた、うれしいたのしい、やさしい気分 遠い空で、ああ、今同じ気持ちでいるなら、大きな文字で 手紙をかくよ、ありがとう」 (手紙をかくよ)
ジュディマリというモンスターバンドに道を作り、そ の出口を導いていったTAKUYA。このアルバムリリース 後、1年の活動休止に入るわけだがTAKUYAとしてはこ の時点でジュディマリに殉ずる覚悟でいたのだろう。 そこから2年後『WARP』という手段で、語弊のある言 い方かもしれないがジュディマリを自害させた。世が 戦国時代なら見事な介錯である。
『POP LIFE』ポップな人生なんて簡単に手に入るもの ではない。ポップに殉ずる気持ちと、そこに至るまで のスリリングな展開、そして心地よい緊張感。もう、 TAKUYAには殉ずる必要はない。ソロで存分に自分を追 求してほしい。「うた」を追求して欲しい、そしてジ ュディマリの頃より追いかけていた『POP LIFE』を目 指してほしい。 さぁ、次はTAKUYAのモンスター、飛び出しておいで!
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2002年08月29日 (木) 18時12分 |
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