しかし、時の流れは本当に早いものだ。
そんな事を痛切に感じたGWを過ごした。
当メルマガでも書いたが、高田馬場のB
ARにいき、実家で中学校から続いている
友達と、子供はいくつだとか、奥さんが
どうだとか毒にも薬にもならない事（も
ちろん、この場合毒にも薬にもならない
ということが心地よかったりするのだが）
を延々喋り続け、飲み続けていくとどう
でもいい事だが少しだけ、自分の辿って
きた道のりを実家に帰りがけの常磐線の
風景のようにダラダラ思い起こすことが
できる。

小さな頃から文章を書くのはとても好き
だった。マスコミの専門学校に通ってい
たということも勿論だけど小学校時代か
ら宿題の読書感想文とかは一生懸命書き
続けた。うちの親が自分の名前に志賀直
哉の「哉」をつけてくれたのは何かの運
命なのだったのだろうか。

すごい、硬い始まり方から入ったけど、
そんな思い出巡礼の休みを経てこうやっ
て好き勝手に文章を書き、それを皆さん
に読んでもらえるという環境について考
えると、そんなキッカケはこのCDを買っ
た事から始まったといえよう。WHITEOUT
というバンドの『BITE IT』。この1枚か
ら今、目の前に見える800枚近くのCD群
に辿り着くとは想像も出来なかった。

そもそも、この頃の僕、つまり8年くら
い前の僕はイマイチ目的もなくダラダラ
過ごしていた。広告代理店に就職したが、
つき合っていた彼女と別れ、「スーツと
かネクタイ嫌いなんだよなぁ…」などと
つぶやきながら、それとなく日々を過ご
していた。
そんな中で音楽を聴くのは好きだった。
当時、邦楽では渋谷系、洋楽ではUKロッ
クが全盛で色々聴いていたがCDを買うま
でには至らなかった。
何故か？お金がなかったから。うわ簡単
（苦笑）就職するまでは時給850円のバイ
ト生活だったのでここでCDを買ってしま
うと今月響くぞ…っていうサバイバル生
活を送っていた。
そんな僕がもらった初任給。中途採用の
割には結構もらった。「ああ、この金を
全部自分の為に使っていいんだ」そして
仕事明けに勇んで手にとったCD、それが
この『BITE IT』だった。

エッジのきいたギター、全編に響くコー
ラス、そして気持ちのいいくらいわかり
やすいメロディ、今改めて聴くと時代は
全く違うもののモンキーズの音に近い。
メンバーも若く瑞々しいばかりの青さを
響かせていて等身大の音楽として、自分
にピッタリ寄り添う音楽だった。「キャ
ッチ−」あぁ、まさにそんな言葉しか当
てはまらない、分りやすい良質のポップ
スがそこにあった。以来仕事中、移動中、
家にいるときよく聴いた。
そこから、出た給料を色々なCDを買う事
に費やした。好き嫌いなく新旧問わず、
ジャケのセンス、試聴した時の感覚と自
分の勘を頼りに。だからその当時のCDと
か見ると「なぜ、こんなCDを！？」とか
思うが、聴くと納得。その当時の僕がい
る。

ジャケットはかじりかけのチョコレート
の写真が写っている。子供が初めて買っ
てもらったチョコレート、嬉しいけど全
部食べてしまうとそれで終わってしまう
ので、少しずつ食べていく。お母さんに
は怒られるかもしれないけど初めて買っ
てもらったチョコレート、それくらい噛
み締めてもいいよね？そんな瑞々しさ、
青さ、切なさがこのCDを聴くと蘇ってき
て、ちょっとむず痒くなるような余韻に
今でも襲われる。別に初めて買ったCDと
うわけではないが、多量のCDに囲まれた
棚を見る度にこのCDのジャケットを思い
出しつい手にとってしまう。そんな記念
碑的１枚なのだった。