好盤だと思う。あんまり、嫌味がなくて耳当たりも
悪くない、というよりむしろ良い。企画としては、
以前からよくあるモノだけど、不思議とありきたり
感はあまりない。B'zの松本のソロ・コンセプト・
アルバム『THE HIT PARADE』はそういう爽やかさに
溢れている。

B'zを最後に聴いたのはいつだろう。もちろん、ヒ
ット・チャートの常連なわけだから、そこいら中で
耳にする機会はあったものの、進んで購入したりす
る事は殆ど無い。強いて言えば、随分前のベスト２
枚（金と銀のやつ）を買ったくらいだろうか。あと
は、なぜか誕生日にシングルを貰ったきがするが、
今ではCD棚の奥の方に眠っている。まぁ、彼等を率
先して聴かないのには、ハッキリした理由が一応は
ある。自分のアンチ嗜好が深く根付いているからだ
と思う。何と言ってもB'zである。スタジアム・ク
ラスのメジャーど真ん中である。ここまでいくと、
彼等の思惑はおいといて、冒険というものはできな
くなっていく。そう考えると売れ過ぎていくのも考
えものである。もちろん、そこまで売れているから
こそ、その中で自分の好きなものとのバランスをう
まくとることも可能だろうから、B'zは未だにトッ
プ・オブ・J-POPSに君臨していられるのだと思う。
そして、今回の『THE HIT PARADE』はそんな「彼等
の（松本の）好きなこと」の一環だと考えると、爽
やかな感じに満ちあふれているのも頷けるというも
のである。

そこに、ZAIN RECORDS系列のアーティストが総動員
されているから、そりゃ、売れるってもんである。
倉木麻衣・ZARD・愛内里菜・宇徳敬子、そして盟友
・稲葉浩志と惜し気も無い人脈のフル活用は「ずる
いなぁ…」と苦笑いしてしまうが、聴いてみるとそ
んなに悪どい感じは受けない。何故だろうか？そう、
その前に松本のギター・テクニックが冴え渡ってい
るからである。

全編に渡って展開されていく、少しやさぐれたブル
ージーなリフが彼の「昭和」なのだろう。そうやっ
て、やさぐれながら彼は昭和の時の中を過ごしてき
た。いつか、日本全土に流れるサウンドを聞かせる
ために。自分の腕、そして耳を養ってきた。その成
果が今回の『THE HIT PARADE』だとしたら、爽やか
な反面に流れるのは彼の執念である。だから、楽曲
自体は割と泥臭いものが多いけど、その執念をコー
ティングするために数多の女性ーアーティストを起
用していったとしたら、なかなかの策士であるし、
そこに彼のロマンチストぶりを感じる。

がしかし、このアルバムのベスト・トラックはやは
り稲葉との『勝手にしやがれ』になってしまうとこ
ろが微笑ましい。やはり、十数年連れ添った盟友で
ある。この阿吽の呼吸には可愛い娘たちが束になっ
てもかなわないものがある。そして、そんな長年連
れ添った友とのコラボレーションにも関わらず、B'
zっぽさがあまり感じられないところに凄く好感を
持ってしまった。イントロやAメロ等は、ハイロウ
ズ『ミサイルマン』を思わせる疾走感があり、この
二人の中で、まだそんな引き出しがあるとしたら、
まだまだヒット・チャートのど真ん中から退くこと
はないであろう。そのど真ん中を僕は聴く機会はあ
まりないだろうけど、こういうガス抜きを聴かせて
くれるんなら、また、その時逢いましょうという感
じだろうか。それまでは、良い意味で「勝手にしや
がれ」ってことで。