(210) THE PERFECT TRIANGLE◆◆UA--ILLUMINATE◆◆ |
投稿者:nabes
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若いなぁ〜。このCDの1曲目を飾る『HORIZON』を 聴いて、真っ先に思った。そして、続く『太陽手に 月は心の両手に』の伸び上がるヴォーカル・スタイ ルが、また若々しさを感じさせ、やっぱUAでもキャ リアによって、歌い方が変わるんだなと確認した次 第である。 というよりも、曲調がこんなに変わっていたとは思 わなかった。前述の『HORIZON』と『閃光』を併せ て聴くと、特にそれは顕著でそう考えると案外UAの ジャンルは幅広いんだということを感じた。
ブレイクした『情熱』などはバリバリにキャッチー ではあるが、バック・トラックではアフロなホーン ズ・セクションやドラムがきめ細やかに鳴り響いて いる。そうかと思うと『悲しみジョニー』ではアコ ギの悲し気な響き、そしてUAのため息混じりのアン ニュイさが、ゆったりしたチューンの中にビシッと 芯をつくりだし、全く新しい歌謡曲のジャンルを作 り出した感さえある。そう思うとUAのヴォーカルが 曲を凌駕していったのは、この辺からなんだろうな ぁ。『数え足りない夜の足音』では高速クラブ・ビ ートの上をすいすい泳ぐUA、もはや一つの楽器とい ってよい。そして、個人的に楽曲のクオリティだけ とれば、キャリアの中でも飛び抜けてる『スカート の砂』『プライベート・サーファー』ラガ・ダブ路 線で一見、夏の気だるい暑さを演出しているように も思えるが、実は冬とかに聴くのも乙なもので、彼 女の音楽がオールタイムなものだということを教え てくれた。そして、『閃光』でミニマルがしかし、 確実に人を殺しかねない、同時に人を救うスピリチ ュアルなノン・ジャンルの壁を超えてしまった。長 らく待たせた感はあるが、UAのベスト盤『ILLUMINA TE』は、彼女の軌跡を辿るのにドンピシャのタイミ ングでリリースされたといってよい。
このCDを聴いて、述懐したわけだが彼女の音は、や はりハッとさせられるものがある。確かにUAって好 きなんだけど、幾分とっつきにくい部分が自分の中 にはあるわけで、だったらCHARAやYUKIちゃんのよ うな日常に溢れる心の揺れ幅などに僕の琴線はロッ クオンしてしまう。そういう部分ではUAの音楽は異 端に満ちていて、オール・タイムでヘヴィ・ローテ ーションとまではいかない。でも、このベストもそ うなんだけど、一度聴きはじめるとしばらく部屋を 染めあげるまで聴き倒してしまう。考えてみると、 過去に出されたオリジナル・アルバムもそういう傾 向がある。
その謎は案外、DISC2のアルバム収録曲ベストを聴 くと、なんとなく分かってくる。実に多彩なジャン ルの音が羅列してある。そして、それがかじった程 度のレベルでなく、完全に本格的なんである。そし てそこの上を泳法の無い泳ぎ方で泳ぐUAの歌唱法、 そしてサラッと歌う永遠。それこそUAのUAたる所以 なのかもしれない。つまり、曲と歌唱法、そして歌 詞が見事に均等なトライアングルを描き出している。 それゆえに、一度聴き出すとなかなか抜けられない 不思議なパワーをそこに感じてしまう。ただ、その ままだと永遠に抜けられないじゃないかというツッ コミも入るだろうが、不思議と魔力が解けるように ある日突然、フッと消える。そしてまたしばらく聴 かない。だから聴いている時は、自分でも気が付か ないレベルかもしれないが、何かに憑かれているの かもしれない。
でも考えてみるとUAは『泥棒』以外全て持っている ので、いまさらベストを買うまでもないかなと思っ たんだけど、このCDに手が伸びたのは、『甘い運命』 これが収録されているということだろうか。そして、 『ミルクティー』。いま僕に彼女がいるからってわ けでは断じてないんだけど、この歌は恋愛というUA が歌う中では最も永遠でないものだからこそ、妙に 生々しく、そして温度が感じられる。こういうテー マにおいても均等なトライアングルのもと、パーフ ェクトな歌を作り出すUA。こういうのを本当の「V ERY BEST OF SONGS」っていうのかもしれない。
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2003年10月02日 (木) 17時25分 |
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