THE CHAMPSといってもピンとくる人は皆無かもしれ
ない。でも、『テキーラ』の人達といえば、「ああ
〜」とくるかもしれない。そう、世界中で流れてい
るテキーラの原曲を歌っているグループ、それがTH
E CHAMPSである。僕はこのCDを最初、友達の結婚式
の余興で使うために購入した。しかし、テキーラの
歌は知っていても、そのグループまではさすがの僕
も知らない。やはりイメージするところのメキシコ
とか、スペイン辺りのワールド・ミュージックなの
だろうかと思ったが、HMVの人に聴いてみたら、あ
っさりロック・ポップスの階に通された。しかし、
思うけどこういうCD屋さんのバイヤーさんの知識っ
て並外れている。もちろん、一部なんだろうけど、
ある意味尊敬に値する。でも、きっと、あれだけ世
界中で流されている音なので、きっと、僕のような
質問は日常茶飯事なんだろう。それはともかく、購
入以来、結婚式の余興は勿論だが、お店のBGMとし
てもこの２〜３年はかなりの勢いで重宝している。
驚く事に、このイントロがかかるだけで、テキーラ
が流れるという一種の高揚した感じに襲われる。別
に最新のクラブ・サウンドでもないのに。

しかし、最近ある事に気付いた。このCDを購入して
２〜３年経つが、『テキーラ』しか、聴いた事ない
のではないだろうか？ということを。これって、僕
の中ではダメなことである。つまりは、邦楽の最新
ヒットを買って、そこに挿入されているシングル曲
しか聴かない傾向。なら、アルバム買うなよ。シン
グル買えよっていう物言い。もちろん、聴き方は人
によりけりなわけで、十人十色であるがしかし、ア
ルバムに収められている他の佳曲、駄曲、インスト。
それを通して聴くそのアルバムの方向性、そのアー
ティストの個人的なルーツ、それを感じ取れるから
こそ、アルバムというミュージック・アートがある
わけで、それを飛ばして聴くのは長い時間スタジオ
に籠り、製作に費やしたアーティストならびにスタ
ッフに失礼なのではないだろうか？という事を考え
てアルバムを中心に買う僕にとって、確かに余興の
一部として購入したCDであるが、仕事用として日々
活用しているCDではあるが、少し反省の意を込めて、
このCDをゆっくりと聴く事にしてみた。

『THE EP COLLECTION...PLUS』つまりは、彼等のシ
ングル・コレクションである。ボーナス・トラック
込みで３４曲、怒濤のラッシュである。古くは１９
５８年から新しくは、２００１年つまり、今でも活
動しているってことか？ちょっと、ビックリした。
そして、１９５８年の音も２００１年の音もあんま
り大差なく流れているんである。音はサーフ感あふ
れるギターと、アルトのサックスが場末感を醸し出
すオールディーズ、まぁ、古き良きロックン・ロー
ルのソレである。『テキーラ』の大ヒットによって
のものなのか、違う曲を聴いても随所にテキーラの
リフが多用されていて、当時の音楽事情とでもいお
うか「二匹目のドジョウ」感覚もチラチラ見えかく
れする。そして、面白いのは彼等が歌っているのは
実は、テキーラだけではなく、『カルーア』という
歌も歌っていたりする。そう、カルアミルクのカル
ーアである。勿論、軽くメロディが流れ、メンバー
全員が「カルーア！」と絶叫するスタイルは変わっ
ていないんだけど（苦笑）。

でも、不思議と聴いていると、あまりそんな事はど
うでもよくなってしまうくらい、気持ちのいいビー
トが部屋中を包んでくれる。大きな音でも小さな音
でも対応できるという点では、優れたBGMなのかも
しれない。全編２〜３分の楽曲は壮大な展開もなく、
軽いタッチでそれでいて、どの曲も死なない程度の
個性がそれぞれに出ていて、こっちも軽くリズムを
刻んでしまう。きっと、昔のパーティ・ミュージッ
クだったんだろうなぁ、何かその時代にタイムスリ
ップしてしまうような錯角を覚えるのはこのバンド
が頑なに、一つの音楽スタイルに固執しているから
かもしれない。確かにこのCDを聴きながらお酒でも
飲んでいたら、気持ちよく酔えそうだ。うちでは殆
ど、お酒を飲む事をしない僕だけど、今度の休みに
でも、ちょっと試してみたくなってしまった。こう
いう、普段と違ったことをしてしまいたくなるとい
うだけで、やっぱりアルバムは全部聴いてみるもの
だな、と再確認した次第である。なにげにジャケに
羅列してあるシングル盤（EP盤って言った方が時代
感を演出できるかな）のデザインもカラフルでポッ
プで、お酒を飲まない人でも、オススメしたくなる
１枚なのであった。