(169) ステレオタイプの元気◆◆BOB SAPP--SAPP TIME!◆◆ |
投稿者:nabes
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いやー、しかしこの1年近くのボブ・サップ旋風と いうのは、本当に凄まじいものがあった。先日、ミ ルコ・クロコップに負けて一段落した感があったが、 その翌日も黒い眼帯をつけての記者会見と見てるも のを離さない抜群のセンスでお茶の間を釘付けにし てしまった。こんな格闘家は大仁田厚以来かな、た だボブ・サップの場合はTVに出過ぎという点以外 は概ね、そのキャラが愛されていたという点で大仁 田のグロな路線と一線を画していた気がする。まぁ、 知っている方は大勢いると思うが、僕はそんなにT Vというものは見ないので、実際サップがどれ位、 TVに出ていたのかは、わからないのだが、仕事に 行く途中の吊り革広告などで、「サップ」の文字や 写真を見ない日はなかったくらいだったので、それ に比例していたのだろうと考えると、ゾッとするく らいである。
しかし、ヤリ過ぎだろうとは思った。いくら人気番 組の企画だからであろうと、たかだか時の人になっ て1年も経っていない素人のCDを出すのは、と思 った。ある日、飯を食いにいったらサップの曲があ るという事実を知った時は。鉄は熱いうちに叩けと はいうものの、それでも熱すぎるし、そんな前例は 桜庭でもピーター・アーツでも小川直也でもあり得 なかった。それをいとも簡単にやってのけた日本の TV業界にはギョッとしたが、快く了承したボブ・ サップという人間に、「この人、根っからのショー マンであり、いい人なんだろうなあ」と思った。と いうことで、そのCDを借りずにはいられなかった。 そんなノリノリの企画モノ。ボブ・サップの『SAPP TIME!』。どこまで一般を揺るがすかを。
何といっても惹かれたのは、そのジャケットであろ うか。思わず大笑いする80年代的な要素が散りば められていた。つーか、基本路線はライオネル・リ ッチーとかロッド・スチュアートのノリである。今 どき、そんなジャケットは着ないだろうというテカ テカの紫に、いまどき、そんな書体はないだろうと いう文字。全てにおいて、完全な企画モノとしての 体を為していて、潔い。つかみは完全にオッケー! (て古いなぁ)である。何かに浮かれていたと評さ れる80年代の気運と、ボブ・サップを持ち上げる このプロジェクトの気運がバブリーな感じを出して いて、見ているこっち側も何か浮かれてしまいそう であった。実は、このCDを借りてみようと思った のは、半分はこのジャケからであったので、その役 割は全うしたといってよい。
そして、音の方なんだが…意外にいいんだ。もとも と、その入場シーン(マドンナの『ホリディ』に乗 ってノリノリでやってくる)とか、勝った後のビー スト・ダンスなどでわかるように、そのリズム感に は定評があったわけだが、ファンクのグルーヴとサ ップのラップが違和感なく溶け合って予想外の良い 驚きに包まれる。やっぱ、こういうのは本場の人に はかなわないものかなぁ、一緒に歌っている日本人 が遥かに霞むくらいのグルーヴを聴かせてくれる。 背の高い人特有の太い声もナチュラル・エフェクト として機能しているのも聞きどころの一つである。
驚き―。ボブ・サップを一言で表すなら、その言葉 が良く似合う。身長2メートル近く、体重、150 キロ以上の大男がスピードを信条とする「PRIDE」 の世界でグルグル立ち回り、土俵の違う「K-1」で も殴りまくり、勝てばダンス、負けても悪びれなく 踊り、時には空から飛んできたり、これ以上ないく らいのファンタジーがそこにはあったりする。驚き、 それが何の嫌味もなく機能して、みんなの顔に笑顔 が生まれる。それこそエンタテイメントの真骨頂だ ったりする。底の無いくらいの不景気とか、原因不 明の奇病とか、耐える事のない国同士のいがみ合い とか、世相はイマイチ明るい材料に飢えている感が ある中、ボブ・サップはそいつを一人で担っていっ ている。時には歌い、時には踊り、時には闘う。そ んなステレオタイプの格闘家が日本を元気にするな らば、一プロレス・ファンとしてはこれ以上ないく らいの喜びである。まだまだ、サップには暴れ回っ てほしい、日本という元気のない国を縦横無尽に。
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2003年05月02日 (金) 08時21分 |
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