(148) 上級者向け実力測定◆◆一期一会--V.A◆◆ |
投稿者:nabes
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今回もカヴァー盤について書こうと思います。ま ぁ、お手軽ですよね。色々なアーティストが一つ のテーマに対峙して、様々なアプローチを施して いくのを1枚のCDで聴く事ができるコンピレーシ ョンものというのは、そこに好きなアーティスト がいるのは勿論、テーマが「おお!」と思わせた ら、買い手としては何の迷いもなく買ってしまう というものです。今回はそんな迷いもなく購入し たCD、スピッツのトリビュート盤『一期一会』に ついて書こうと思います。
何といってもこのCDの一番の特徴は、リリース当 時話題になったように松任谷由実が参加している ということ。通常、トリビュートというのはその 世界において後輩のアーティストが敬意を表し、 先輩の歌を歌う事により、成立するという暗黙の 了解みたいなものがあるのですが、女王ユーミン はアッサリそのハードルを超えてしまいました。 まず、このニュースを聴いた時は「さすがユーミ ン!」と唸らずにはいられませんでした。そして そんな女王がトリビュートすべきアーティストが スピッツであったことにも見事としか言い様がな く、ユーミンのアンテナの多用さとその中からの 取捨選択の状況判断には、思わず舌を巻く思いで す。おそらく、ユーミンがこのような形で後輩バ ンドのトリビュートに参加するのは、しばらくは 無いと思われます。(あるとしたら、槇原敬之と aikoのトリビュートが出るような事があったらあ り得るかもしれません)そして、そんなユーミン のカヴァーしたのは割と最近の『楓』だったりす るのですが、これがまた何ともユーミン節に満ち た大人のカヴァーになっているのが、凄いと思い ました。
勿論、それだけじゃありません。今年、いよいよ 戦列に復帰する椎名林檎は『楓』のカップリング にあたる『スピカ』をファンシーにそれでいて、 ラウドな「いかにも」のカヴァーを施し、奥田民 生は『うめぼし』を原曲の素朴な感じをそのまま に、お得意のアメリカン・ロックに仕立てあげ、 中村一義は僕がスピッツで一番好きな、『冷たい 頬』をあくまで真摯に、そして自分の領域に持っ ていくアッパーなオリジナルを作り上げました。 (ちなみに余談ですが、このCDで僕は中村一義っ て初めて聴きました。なかなかやるじゃん)そし てPOLYSICSは少し拡大解釈過ぎかな??とも思え ますが、『チェリー』という大ネタを本人曰く、 「プログレ」に仕立てあげ、これはこれである意 味健闘といえるでしょう。前回も書きましたが、 こういう大ネタといえるやつが実は、一番難しい んだろうなぁと思うんです。
さて、ここまで書いて気がつくのですが、現代に おけるトップクラスのメロディメーカーであるス ピッツの曲というのをカヴァーするという行為は、 ミュージシャンにとってはかなりシンドイ作業な 筈です。そこで化けの皮がはがれるか、それとも あくまで見事な折衷を計れるかという意味では、 かなり上級者向けの実力測定の機会だと思います。 ただ、その課題を前述のミュージシャン達におい ては、見事クリアしてあくまで自分の歌のように しれっと歌い上げることに成功したといえるでし ょう。新人バンド達も頑張ってはいたものの、や はりユーミンや奥田民生、椎名林檎あたりと比べ るとステージが段違いと言わざるを得ないのが現 実です。ただ、今回の抜擢をいいステップと捉え たとしたら、それはそれで成功かもしれません。
そして、そこまで上級者向け実力測定の背景には、 何といってもスピッツの楽曲の素晴らしさ、これ が如実に浮かび上がる訳です。元の楽曲が素晴ら しければ素晴らしい程、そこからオリジナリティ を出すというのは、かなり難儀な作業になってい く。やはりスピッツの曲は唯一無二、スピッツに しか出来ないような気がします。そう考えると、 勿論この企画にスピッツというバンドは絡んでい ないでしょうが、この企画を立て実力測定を企て るという大層な事をしときながら、『一期一会』 という立派だけど、ある意味シニカルなタイトル をつけるセンス、このa teenage symphonyという レーベルは結構、大物のような気がします。次の コンピレーションにも充分期待が持てるレーベル だと思います。
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2003年02月20日 (木) 18時50分 |
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