およそ、１年ぶりのあややである。まぁ、アルバム
自体もちょうど１年ぶりなので、それも当然の事な
のだが、それにしてもこの１年であやや株は去年の
非ではないくらい上昇していった。
何といっても松浦亜弥というアイドルの存在を決定
的にした『?｡桃色片想い?｡』から始まり、３枚のシ
ングルでその人気を不動のものにした。それに伴う
初のソロ・コンサート・ツアー、ごまっとうなどの
豪華ユニットなど、各方面にて隙のない話題を提供
していったことはスタッフの力添えも勿論だが、や
はり松浦亜弥本人の持つ、アイドル性あってのこと
だろう。今じゃ、天下のSMAPもパクる程の人気者で
ある。

そんな中、満を持してリリースされた２ndアルバム。
『T.W.O』は松浦亜弥、つんく、そしてスタッフの
力を総動員して作られた去年の総決算的作品である。
基本的には前作『FIRST KISS』と変わらない構成に
なっている。１、２、４、７曲目にシングル（７曲
目はごまっとうのソロ・バージョンではあるが）を
入れていき、その他は色々な実験的な試みと王道ア
イドル路線を踏み外さない佳作が集まっている。そ
んな中、ひときわ異彩を放っているのが、『草原の
人』が収録されている点に尽きよう。
故美空ひばりさんが作詞をしていながら、２１世紀
まで眠りに眠った作品を、現時点のトップ・アイド
ル、松浦亜弥が時空を超えて蘇らせる。この作品の
存在が前作と今作の決定的な違いである。

この曲を聴くにつけ、「歌謡曲っていいなぁ」と思
う。年を追う毎にガンガン上がっていく曲のキー、
早い展開と多様な楽器、コンピューターを導入した
曲も勿論、悪いものではない。時代は違うものの、
それによって数々のミリオン、ダブル・ミリオンな
どの作品が産まれた事は歴史に残る事実だし、それ
によって楽曲の幅というものが広がってきたことは
否めない。しかし、結局日本人は好きなんだよね、
ＡメロＢメロ、そしてサビの単純な歌謡曲が。キー
もさほど、高くないこの曲を聴くと「そこにあるべ
きものがあった時」のような嬉しさを覚えてしまう。
詞そのものも、簡単なそれでいて美しい日本語が、
ちゃんと意味を為して構築されていて、そこに曲間
のあややの台詞が、またたまらなく胸を締め付ける。

「大人になるって・・むずかしいんだなぁー」

「大人になるんだ！！もう、泣かないさ。。」
　　　　　　　　　　　　　　（草原の人：台詞より）

ひばりさんは、この曲をどんな気持ちで作ったんだ
ろう。少女の頃より、大人の歌を歌い続けた彼女の
中の淡い子供の心。こんな深い歌は直接、ひばりさ
んの偉大さを知らない世代が歌わないと、歌に負け
てしまうだろう。そういう意味では時空を超え、松
浦亜弥が歌うということは、バッチリのタイミング
といえよう。
まぁ、しかし改めてつんくの着眼点には舌を巻く思
いである。２１世紀に再び産まれたアイドル幻想、
そこに現代のマーケットもキチンと押さえつつ、大
事なものはちゃんと外さない。歌謡曲の誰でも口ず
さめる、それでいて心に響くわかりやすさ。それこ
そ、このアルバムのタイトル『THAT WODERFUL ONE』
そのものなのである。多角的な実験性はモーニング
娘。に任せて、あややにはひたすら、わかりやすさ
を追求させてほしい。忘れてはいけない、素晴らし
いひとつだけのものを。