(141) 空き家を探せ◆◆WHITEBERRY--自転車泥棒/BE HAPPY/声がなくなるまで◆◆ |
投稿者:nabes
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今回初の3枚まとめての雑文である。まぁ仕方 ないっちゃ、仕方が無い。3部作だし、テーマ も明確だし、何よりも僕の世代にとっては、ジ ャストの選曲だからなぁ。 しかし世の中は、とにもかくにもカヴァー曲ブ ームである。確かに甲本ヒロト曰くの「何をや るかでなく、どのようにやるか」という観点か えらみると、興味深いかもしれない。結局、カ ヴァーというのはまるで、その人達のオリジナ ル曲のように振る舞うことだから、そう聴こえ た時点でその人たちの勝ちである。そこで、 「オリジナルナンバーの方がいいね」などと言 われたら、そのカヴァーした人達の実力という のも分かってしまう。いわば、実力測定のいい 機会なのだ。
そんな中で今回のWHITEBERRYのカヴァーは、若 干そんな趣とは少し異なるような気もする。何 せブレイクしたシングルはジッタリン・ジンの 『夏祭り』であった。あの機械的でいて、セン チメンタルを含んだ名曲に再び命を吹き込み、 世間に広く届かせた。事実、どちらかというと オリジナルに比べるとセンチメンタルな要素よ りも、エモーショナルにその歌を蘇らせて、か なりのアッパー度があったように思えた。 そして数年、今回のバンドブーム・カヴァー3 部作である。あえて、メジャーどころを外した 感じのA級半の選曲は、バンドブーム・チルド レンからすると涙ものである。ユニコーンは置 いておくとしても(とはいっても自転車泥棒と いうセレクトは・・)パーソンズそしてジュン スカとなると、完全にマーケット的にはターゲ ットにされた感がある。
ただ、この選曲に関していうならば彼女達とは 別の裏方さん達の怨念も見えかくれする選曲の ように思える。BOφWYやブルーハーツなどに隠 れたバンドブームの関脇クラスの更に隠れた名 曲の掘り起こし。「あの時、何故、この曲は売 れなかったんだろう?」という疑問をWHITEBER RYというフィルタを通して投げかけているよう に思える。なので、ちょっと『夏祭り』の時に 比べると、イヤらしさを感じる3部作かもしれ ない。
もちろん、WHITEBERRYには何の罪も無い。どこ ろか、アレンジ的には彼女達らしい、元気一杯 な清々しい演奏が広がっていて、オリジナルに 負けない良さを放っている。『自転車泥棒』は レゲエ・タッチにゆるーく、『BE HAPPY』は一 番オリジナルに近いものの、若さを前面に出し た爆発力に溢れている。ムーグの奇妙な感じも 今時の女の子っぽさを演出している。そして、 『声がなくなるまで』はドラマチックにクリス マス時期をうまーく狙った壮大なバラードに生 まれ変わった。今回の3部作では一番、『声が 〜』が好きかもしれない。
しかし、WHITEBERRYというバンドが次のステー ジに行くにあたって、ここで踏み留まっている わけにもいかないだろう。あくまで『夏祭り』 は勿論、今回の3部作はビートルズにおける初 期のR&Rカヴァーでなくてはならない。この3 部作においてC/Wは彼女達のオリジナルが収録 されていたが、ぶっちゃけた話、イマイチ響い てこなかった。でもそれは仕方が無い。まだ若 いしこの3部作を血とし肉とし成長していきゃ いいんだから。そう考えると、彼女達において はカヴァーは実力測定ではなく、実力アップの いい機会と考えると辻褄が合う。そこに裏方の ささやかな怨念が混在していると考えると、そ れはそれで可愛い話か。 ならば、少し待とう。彼女達が、このレベル・ アップを本物にして、素晴らしいオリジナルを 構築するまで。女の子バンドは増加している一 方で彼女達にしか出来ない、今のポップチャー トにポッカリ空いているであろう空き家を探し てほしい、センチメンタルはZONEにでも任せて おけばいい。あるぞあるぞ、WHITEBERRYしか出 来ない唯一無二のバンドサウンド。まだまだ空 き家はあるから、しっかり実力を貯えていって ほしい。そして、バンドブームの恩恵で彼女達 の音を覚えた僕のような人間に「おお!」と思 わせる曲が出来た時は、自然とまたGRAD ALL O VERに勝利宣言ともいえる文章を書く事にしよう。
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2003年01月27日 (月) 17時03分 |
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