アメリカのロックって本当にバカ〜なものが多いと
思う。カラッとしてて、とことん突き抜けてて、気
持ちのいい感じで、バカである事を何一つ隠さず、
聴いてると楽しくなってくる。イギリスのロックは
そこに、何だろう。ちょっとドラッギーなニュアン
スが隠されていて、突き抜けるというより、漂う感
じのバカであると言った方が適切だろう。そんなア
メリカン・ロックの、自分で特にバカなものを不定
期に「アメリカンロック・バカ一代」と名付けお送
りするとしよう。

もちろん、アメリカンロックの全てがバカな訳でも
なく、真面目にロックに取り組んでいる奴らも大勢
いる。というか、実際はみんな真面目に取り組んで
いたりするんだろうが、バンド〜CD〜リスナーとい
う経路だけで捉えてみて、「どう聴いても、こいつ
らオツム足らねーなぁ」って微笑ましくなってしま
うものがある。今回取り上げた、ZEBRAHEADも僕の
中では、そんなバンドの一つである。

まぁ、バカにも色々種類がある。ZEBRAHEADの場合
は、単に無邪気そのものなバカである。弾きたいフ
レーズを実に楽しそうに弾いている。歌いたい事は
そんな意味があるとは思えないけど、全く、邪な気
持ち無しに単純に歌う。そこにスクラッチも入れた
い、ドラムだけのブレイクもあったら、面白れ〜な
ぁ、コーラスとかも、きっと好きだったバンドっぽ
い響きのコーラスワークだったりするし、でもきっ
と、この人達すきなんだろうなぁ、そのバンドの事。
みたいな感じを否応なく受けて実に楽しそう。自然
に両手を上に上げてしまいそうな、一緒に歌っちゃ
いそうな、きわめて、スターの臭いがしない、庶民
的な感じがする。なんか近所の子供達みたいな、そ
んな無邪気なムードを携えている。

「やりたい放題」みたいな、玩具があるのを御存知
だろうか？ちょっとした箱のようなものに、色んな
ものが入っていて、子供はそれさえあれば、本能に
従って、やりたい事のできる玩具である。正式名称
はちょっと忘れてしまったので、知っている方がい
たら御一報下さい。その玩具のCMを見るにつけ、う
まいもの考えるなぁと感心してしまう。
子供のやりたい事って想像が出来ない、もちろん、
親とかならある程度の予測で判断できそうだけど、
子供のいる家に遊びに行って、戯れていると予期し
ないことで、泣いたり、笑ったりする。それって、
何にも守るべきもののない無防備な中での本能に従
っての行動だから、その子の中では絶対的な正解で
ある。ZEBRAHEADの音楽って、そんな子供の本能に
似ている気がする。

ギターの弾きたいやつが、ベースの弾きたいやつが
ドラムを力一杯叩きたいやつが、レコードをスクラ
ッチしたいやつが、そして目一杯歌いたいやつが、
そのその感情に忠実にプレイしてるので、大概、ベ
ース、ドラムという俗にいうリズム隊といって、脇
な感じのパートにも自己主張が見えてくる。もちろ
ん、ギターやヴォーカルもそれ以上の自己主張をも
ってプレイしてるので、ある意味収拾がつかない。
でも、その収拾のつかなさが一度、その音の中に入
ってしまうと、実に気持ちのいいものに聞こえる。
曲もキャッチーなものが多いから素直に楽しさに溺
れてしまう。考えてみたら、子供と戯れてると、そ
の楽しさに癒されたりするものなぁ。

子供のような直感を頼りに、楽しさというものに正
直に演奏していくZEBRAHEADの姿勢、それは本当に
無邪気そのものである。曲も正調ハードロックから、
ラテンな悪ふざけなナンバー、ラップをふんだんに
使用した今のミクスチャー的な曲、よりどりみどり
である。
前述した「やりたい放題」みたいに、アレがしたい、
コレがしたいそれだけがゴールという、色々考える
事で一杯な大人には、実に簡単で、童心に戻してく
れる本能の癒やし系なバンド。そんなバンドをバカ
と言わずに何と言おう。でも、そんなバカが実に羨
ましくって眩しく見えるのが、このバンドの最大の
武器なのである。