不思議とこの人を見ていると、ある人とだぶる事に気
がつく。ブレイクのきっかけを作ってくれたTKという
ある意味、ジャンルから逸脱を計り、新しい世界を手
に入れた点。常に新しい音を貪欲にむさぼろうとする
姿勢。みんなで一緒に歌い、口ずさむ事の出来る共感
性。そして、歌によっては男の子な文体を使うのだけ
ど歌事体は女の子のための歌な無性別な点。hitomiを
見てると小泉今日子にかぶると思うのは僕だけであろ
うか？

最近、２枚目のベスト盤も出し、トップとしての気品
も漂う、女の子のロール・モデルhitomiの『LOVE LIF
E』を聴いてみた。このアルバムといえば、まず思い
出すのはジャケットのセミ・ヌードである。惜し気も
なくそのスレンダーな体を見せている。その綺麗な裸
身は男性的に見れば、イヤらしくないものだし、女性
的な観点から見れば、綺麗となるそのジャケットでこ
のアルバムは６割勝っている。ここで前述した、小泉
今日子に振り返ると、彼女も『TRAVEL ROCK』のジャ
ケでセミ・ヌードを披露している。リリース前は反響
を呼んだが、アートとしての体を成しててエロの範疇
にいかせない説得力があった。もちろん、両者にも相
違点があり、hitomiの方はどちらかというと、男性で
も通用しそうな顔をしており、小泉今日子があくまで
女性としてのロックを打ち出しているのは真逆にワイ
ルドな感じがする。そう考えると、hitomiって不思議
な顔をしているなぁ、と今ジャケットをマジマジと見
てしまった。

楽曲の方に耳を傾けてみると、無性別なhitomiワール
ドが、ふんだんに散りばめられている。パッと聴いた
感じだと、「僕が」とかいったり、「守り続ける」み
たいな男の子的強さな歌詞が、すぐに耳に飛び込んで
くるが、これが不思議なもので、よーく聴くと、女の
子というより、母性に溢れているようにも聞こえる。
hitomiの切羽詰まった鼻にかかった声から優しさが滲
み出ている。だから、気がつくと男生と女性の螺旋を
グルグル回っていき、しまいには「ああ、ていうかこ
の人の＜ひと＞の歌なんだわ」という結論に納得する。
この＜ひと＞の歌という感覚は勿論、小泉今日子にも
通じる部分がある。民生と陽水の名曲、『月ひとしず
く』なんかを聴くと、よくわかるだろう。
曲はデジタルな感じのロックと伸び上がる高揚感が、
男性のダイナミズムと、女の子のイケイケ感が混ぜ合
わさっていて、時に力みなぎるガソリンのように、時
に照りつける太陽のように根っこの深いパワフルさが
ある。既に彼女の代表曲となった、高橋尚子応援歌、
『LOVE2000』もデジタルビートの直線的なギザギザと
ホーンズの伸びやかな曲線が歌謡曲というラインギリ
ギリで活かされていて、こりゃ、Ｑちゃんじゃなくて
も盛り上がるだろう。（ちなみに、ホーンズはスカパ
ラ。そりゃいいわ）

僕の中ではhitomiはアイドルである。アイドルという
のは、じゃっかん語弊があるので、スーパーアイドル
と呼ぼう。それは小泉今日子がどんなにアイドルとい
う路線を逸脱して、ロック路線に移ったとしても、永
遠のアイドルと呼ばれたように、hitomiも小室哲哉と
いう一つのムーブメントから離れてもhitomiはhitomi
なのだから、呼ばれ方などハッキリってどうでもいい
事だという、hitomi自身のうたを手に入れた確信の潔
さがあくまで「スーパー」である。それまでの自分を
超えたら、そこにいたのは何の事はない。裸の自分、
本当の時分がいた。それをわかっているからhitomiは、
これからも性別やジャンルを飛び越えた、＜ひと＞の
歌を歌っていくだろう。それが果てしない道とわかっ
ているから、その道の中でやりたい事を全てやる。

「愛はどこから、やってくるのでしょう
　自分の胸に問いかけた。少しずつだけど色んな事が
　変わって、私はここにアル」
（LOVE2000）

今年の２４時間ＴＶで彼女はブリブリのカワイイ格好
で、『SAMURAI DRIVE』を歌った。その様は誰よりも
体の不自由な人達に自由を与えたように思える。だか
らこそ、最後に笑顔で「ピース！」でしめくくった。
おそらくまだまだ、無敵だわ、このひと。