先日、ある進学塾に通い、国語がよくないという５年生の男子の体験授業をしました。５年生だというのに、ひどい口臭のする子でした。相当のストレスを抱え込んでいるようです。そして、５年生なのに、コボちゃんのパズルができませんでした。これはとてもめずらしいことです。ご両親そろってのご見学で、一見、とても教育熱心なご家庭にお見受けいたしました。

感想と結果は以下の通りです

1、この子はいままで、難しい国語の勉強におそらく何百時間も使って来たのでしょう。ところが、５年生なのに、コボちゃん作文レベルの単純な情報処理すらできないのです。おそらく誰一人、この子に、たとえば、一文の書き方すらいままで教えてこなかったのです。それは外国人のような奇妙な、文章でした。添削どころの話ではありませんでした。

2、文章が書けないだけではありません。それ以前の段階でつまずきがあります。この子はコボちゃんという四つのピースから全体を組み立てる―――断片的情報を組み合わせて整合性のあるお話ひとつつくるということすらできない。要するに「考える」ということすらできなくなっています。

3、この子の頭は、おそらく連続性とか脈絡・文脈のない断片的情報でごちゃごちゃ埋まっています。他の教科のテストはそれでも点が取れます。理科・社会は特にそうでしょう。一部の学校をのぞき記述とか作文は要求されませんから。

4、でも、おそらくこの子は理科・社会そのものはできないでしょう。断片的情報から何らかの有機的な知識すら立ち上げることができないのに、理科も社会もないではないでしょうか。年号ぐらいの暗記はできるのかもしれませんが。

5、国語も同じなのです。ちょっと複雑な文章になると、おそらくパニックになっているでしょう。読解問題どころの話ではないのです。脳の基本配線がおそらくまだできていないことすら疑われます。そこに、複雑な電流を通してもきちんと通るわけがありません。

6、この子は受験一組とか二組だそうです、なるほどこの進学塾のレベルがよく分ります。それは、ひどいレベルです。この進学塾は文部省に対抗した学力論がありますが、私にはそれは、あの『モモ』に出てくる時間貯蓄銀行ならぬ学力貯蓄銀行に見えてきます。

7、一時間半ぐらいかけて、それでも苦労して何とか基本配線のいくつかを引いてあげました。---でも、最後まで、この子にもご父兄にも私がしたことの意味も分っていなかったようです。そして、確かに、このような生徒さんでも、いまの日本の試験制度では、三流ですが私立中学どころか、大学まで進学できるのです。記号式の断片的情報処理の要領があれば、それでこと足りてしまうのです。

8、弟さんまでついでに無料体験をしたのに、この生徒さんは入室なさいませんでした。お断りするというそのお返事すらありませんでした。このご父兄のレベルというものがよく分ります。私はとてもくたびれました。

9、進学塾に通う生徒さんはお断りです。